エリート官吏は学習院女学部卒も女学館卒も嫁候補にはせず—女言葉の一世紀 70-(松沢呉一) -3,427文字-
「金子清子から見えてきた女学生の意外な実情—女言葉の一世紀 69」の続きです。
未婚率を調べる
扇谷亮著『娘問題』には米国に滞在しながら日本に向けて米国の紹介記事を書いていた、当時としては珍しい有田純清という人物の文章が出ています(これはインタビューではなく寄稿したものと思われる)。
娘問題は米国に於いても今猶ほ盛んに論ぜられて居る。如何に其娘を教育す可きか、家庭で教育す可きか。思慮(かんがへ)のある両親等の頻りに頭を悩ましつつある問題である。或る人々は曰く、大学出の婦人は料理が下手で裁縫が出来ず、書物を読む事許り知って、家政にはから駄目である。迚(しか)もこれ等の点に於ては家庭で教育せられた娘に及ばない。離婚数の増加するのも之れがためであると。そしてまた或人は曰く、大学教育を受けた婦人は、老嬢になる者が多いと。之に対して大学の連中は然うぢゃ無いと極力弁解して居る。其の言ひわけはかうである。大学出の婦人が多く独身生活を為すといふは誤れるの甚しいものである。大学の統計を見よ、諸大学女子の八分の七は結婚するではないか。
前にも出てきたかと思いますが、「から駄目」は「からきし駄目」の意味。「老嬢」は未婚のまま歳をとることです。
卒業後何年経った段階での数字かわからないですが、最初にこれを読んだ時、「この頃でも米国では大学を卒業した女子の八分の一は結婚をしなかったのか」と逆の意味で驚きました。
しかし、前回数字を出したように、華族女学校の卒業者から推察できる女学校卒の未婚率も十分に高い可能性があります。あくまでその可能性があるとしておくに留めつつ、その数字の高さを確認するために、人口統計資料集を調べてみました。
生涯未婚率は50歳の段階での未婚の率を調べたものです。
これよると、1920年における女の生涯未婚率は1.80パーセントで、1960年まで1パーセント台が続きます。100人に1人か2人しか結婚しないのがいなかったのか! 2014年では14.6パーセントですから、いかに増えているのかわかります。
2010年の数字で、35歳から39歳では25.1パーセントです。30代後半で4分の1が未婚です。
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