秘密のお店の秘密のプレイ—越谷流の思い出-[ビバノン循環湯 505](松沢呉一)
これは「アサヒ芸能」でボツになった取材を原稿にしたもの。メルマガ講読者用のevernoteが初出だったと思います。
越谷の風俗店を取材したのはこの一回だけで、今回ストリートビューで、その場所を探したのですが、越谷駅ではなく、南越谷駅だったと思います。現在はおっぱいパブさえ見つからず、飲み屋ビルがチラホラある程度。当時は風俗ビルがあったはず。図版は南越谷だけじゃなく、越谷市内の風景をストリートビューから拾いました。サムネイルはたまたま入り込んでしまった
越谷流と書かないでください
規制が厳しくなって、今はもう残っていないが、埼玉県越谷市のイメクラに行った時のことだ。西川口の西川口流に倣い、越谷流という言葉があったくらいで、数年前まで越谷のヘルスやイメクラはほとんどが本番店であった。
その取材では、本番の店は取り上げないことになっていたのだが、埼玉の別の地域にある店に、そのイメクラは本番店ではないはずだと聞いて取材することになった。
歓楽街といった雰囲気の街ではなくて、駅前のこぎれいな通りを進むと風俗ビルがある。
フロントで改めて取材趣旨を説明したら、従業員はこう言い出した。
「越谷流とは書かないで欲しいんですよ」
「えっ、ここは越谷流なの?」
「えっ、知らなかったんですか」
驚いた私にあっちも驚いている。
念のために編集部に電話したのだが、担当編集者がつかまらない。本番であることを隠して紹介する手もあるのだが、読者の中には本番店を嫌うのもいて、「話が違うじゃないか」となることもあるし、昨今は警察がうるさくて、店名や電話番号まで掲載していると、売防法違反の幇助として雑誌が摘発される可能性もある。
そこで、「たぶんボツになると思いますよ」と店長に断って、体験だけしておくことにした。通常のプレイ料金を払うので、あちらとしても文句はない。
本番店の方が楽です
相手をしてくれたコは、やたらと愛想がよくて、ペラペラと自分の事情を話してくれる。すべて本当の話だろう。どうせ記事にはならないだろうと思いながら、話が面白くて私はメモをとりながら質問をし続けた。
彼女は、池袋にあるいくつかの風俗店を経て、西川口へ。しかし、ここは西川口流ではない店、つまり本番なしの店。西川口でもこういう店はある。
「当時、私は本番のヘルスとかサロンがあるなんて知らなかったんですよ。ヘルスやサロンはすべて本番がない店だとしか思っていなかったんです。でも、西川口で西川口流という言葉を知って、ビックリしました」
続いて、今の店ではない越谷の店に来て、ここが初めての本番の店。
「こっちが地元なので、西川口まで通うのが面倒になってきて。移動の時間が無駄じゃないですか。最初から本番だっていうのはわかってましたよ。前は絶対本番の店はイヤだと思っていたんですけど、普通のヘルスで働いていると、本番を強要する人とか、“金を出すから本番させろ”ってしつこい人が多いじゃないですか。それがストレスになってきて、だったら最初から本番の店に行った方が楽だなと思ったんです。やってみたら、私にはこっちの方が向いていました。本番さえすればお客さんは文句を言わないから、楽なんですよ」
こう考えるコもいる。本番がイヤなんじゃなくて、ルール違反のことをしようとすることがイヤなんである。
カレシは仕事のことを知ってます
ひと通りの話を聞いて、室内にあるシャワーに入る。乳首が大きく、くっきりと妊娠線がある。
「子どもがいるんだね」
こういうことをすぐに指摘してしまう私である。
「バツイチなんです。子どもを託児所に預けなければならないので、時間を無駄にしたくないということもあってこっちに移りました」
「でも、地元だと怖くない?」
「それもあって最初は池袋まで出たんですけど、もう離婚もしているから、バレて困ることもないかなって。今のカレシは、この仕事のことを知ってますし、カレシの職場はここじゃないから、同僚が店に来ることもないし」
「へえ、公認なんだ」
「はい。隠していてパレたらイヤじゃないですか。だから最初から話しました。でも、風俗のことを全然知らない人なので、本番だとは気づいてない」
「越谷なのに」
「越谷流なんて言葉は絶対に知らないと思います。カレシにはエステだと言っているので、たぶん手だけでやっているような店だと思っているんじゃないかな。興味がないのか、触れない方がいいと思っているのか、詳しいことは聞いてこない。本番だと知ったら嫌がると思うけど、ここだったら、コンドームもつけるんだから、安全性で言ったら、手コキの店とどっこいですよね」
安全だからいいってもんではなかろうが、口内発射もないのだから、「精液を口の中に出されるくらいなら、コンドームをつけてマンコの中で出された方がいい」という気持ちもよくわかる。私自身、もし女だったら、コンドームをつけて本番をした方がいいような気がする。
もっとそこを攻めてもらえませんか
私から攻めたのだが、彼女は激しく感じる。本番店の客は入れることに主眼があるため、丁寧に攻める客は、一般のヘルス以上に少なくて、攻められ慣れていない傾向があるものだ。
彼女も「こんなふうに優しくされると感じてしまいます」とそれを受け入れる。
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