医師の不祥事二題—懲戒の基準[10]-(松沢呉一)
「社内恋愛・社内セックスが懲戒になる条件—懲戒の基準[9]」の続きです。
連発する医師の不祥事
病院に行くのが嫌いな私ですが、体調不良のため、先日ついに行きました。
最初に行った際、みっつの診療科を回ったのですが(たらい回しとはまた違う)、内科は女性医師でした。昨今の医師たちによる不祥事を見ると、医師に性行為を迫られたらどうしようって不安にもなります(私はならなかったですけど、状況次第では不安になる人もいるんじゃなかろうか)。
ひとつはこの事件。
院内で性行為をしていたことは医師が認めており、停職3ヶ月はその範囲での懲戒です。自衛隊員同士でセックスしていたことの懲戒は最大30日でしたから、相当に重い。のちに見ていきますが、一般に公務員は懲戒処分が重いのですが、病院はそれ以上に重いのかもしれない。
相手から強制性交、つまりは強姦の告訴状が出されておりますが、医師はこれを否定しており、今後の展開次第で懲戒解雇に切り替わりましょう。
「繰り返し」だった点で、合意であった可能性もなおありそうですが、合意であっても、勤務中であり、病院内の行為ですから、懲戒になることは必須。自衛官同士でセックスしていた例と同じく合意だった場合は相手も処分されましょう。
業務外での不祥事
もうひとつはこちら。
こちらは勤務外の行為であり、一人は容疑を否認、一人は一部否認ですから、まだ処分はできない状態でしょう。本人の聴き取りをし、弁明の機会を与えるのが懲戒の必須手続きです。
このふたつの例を比較すると、前者は勤務中であり、病院内でのセックスを認めており、後者は勤務外のことであり、容疑者は否認と一部否認です。後者についてはどちらの意味でも慎重にやらないと、裁判になって病院側が負ける可能性があります。懲戒処分、とくに解雇は簡単にはできないのであります。
その前提にあるのは、個人の領域での行為に対して、懲戒できる範囲には制限があるってことです。
この前提を理解しない人たちがいっぱいいて、業務と無関係の行為であっても、すぐに役所や会社に対して「おたくのコンプライアンスはどうなっているのか」などと処分を求める電話をする人たちがいます。法令遵守を求めるのであれば、自身がまず法令を理解しなきゃダメです。
この「懲戒の基準」シリーズは、法律の解釈をしたいのではなく、昨今増えているそういうタイプの人たちを批判するのが主眼です。
(残り 1420文字/全文: 2545文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ