イエローベストが孕む反ユダヤ主義、XRが孕むエコファズム—ポストコロナのプロテスト[8]-(松沢呉一)
「フランスも対策すべき点を無視して飲み屋を規制—ポストコロナのプロテスト[7]」の続きです。
パリのアンチマスク・プロテストはベルリンの100分の1規模
フランスでの新しい規制はメディア上では大きく取り上げられていても、英国ほど反発が大きな広がりになっていないようにも見えます。プロテストしようにも人数制限が厳しく、新規のデモ申請は通らないようですから、違法になってしまう事情も関係しているでしょう。深夜の路上でのプロテスト宴会もフランスではできませんし。
それ以上に、多くの国民は尻拭いにならない尻拭いを飲食店に押しつけて満足しているってところでしょうか。これは英仏日に共通します。
フランスでイマイチ盛り上がらないのは飲食店のプロテストだけではありません。アンチマスク・プロテストも盛り上がってません。それがいいか悪いかではなく、事実としてそうなのです。
飲食店に対する規制が発表された9月23日には同時に集会を千人に制限する規制も発表されていますが、それ以前からアンチ・マスクはそんなに人が集まってませんでした。
動画も上がっているのですが、集会をすべて撮った2時間の動画しか見当たらない。観ても面白くないので、埋め込まないでおきますが、参加者は200人から300人。ベルリンではアンチマスクで18,000人集まっている時に、パリでは下手すりゃ100分の1です。
「なぜフランスでは盛り上がらないのか」という話題の方が盛り上がっているかもしれない。
この理由はいくつかありそうですが、それ以前からフランスではマスク率が高かったため、マスクをすることを嫌う人の絶対数が少なかったであろうことが想像できます。
それにしてもプロテスト参加者が少ないですが、これは警察が法に忠実だからでもあります。8月末に義務化がなされた最初のアンチマスク集会では、参加者の半数に当たる123人がルール通り罰金の切符を切られています。払わないで済んだ人は全員呼吸器系の病気に違いありません(言い逃れでも警察は調べるのが大変ですからスルーすることが多いのではなかろうか)。
公共交通や公共の室内空間でのみマスクが義務化されている国では、屋外ではマスクなしで集会ができますが、フランスは屋外でも義務化されてしまったため、アンチマスクなのにマスクをしなければならない。ナチス反対集会でハーケンクロイツの旗を持つことを義務づけられたようなものです。
参加者は誰もマスクをしていないですが、おそらく強制的にマスクをつけさせることまではできず(できる国もある)、罰金のチケットを切られたあとは見逃されるようです。日本円で15,000円くらいの罰金を払ってまで参加したくはないでしょう。1回の集会で100万円以上の売り上げですよ。
状況を問わず、マスクをしていないだけで罰金刑になることも、実質的にそれが集会規制になることも、私は拒否したい。
※2020年8月28日付「Le Point」 123人が罰金刑となったことを報じるフランスのメディア。この記事では、プランデミック系アンチマスク派の主張は見られず。あえて拾わなかったのかもしれないですが、プランデミック派を排除した集会か? プランデミック派を外したから、これしか人が集まらないってことだったりして。
イエローベスト運動も復活
パリのアンチマスク集会はイエローベスト・プロテスターが協力しているようです。
イエローベストはコロナでしばらく静かにしてましたが、すでに復活しています。
イエローベスト運動は2018年末から始まっているので、そろそろ2年です。2019年前半でピークを超えて沈静化していたはずなのに、コロナを経て完全復活した感があります。
イエローベスト運動は燃料の高騰に対するプロテストから始まった反貧困・反資本主義運動と言えますが、極左も極右も混じっていて、日本で言えば嫌儲にも少し近いかもしれない。
参加者のインタビューを見ると、ロックダウンに反対しているように思える点もあって、フランスでアンチ・ロックダウン、アンチ・マスクが盛り上がらないのは、イエローベストが吸収しているためか?
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