ナイジェリア全土で巻き起こる殺人警察SARSとの闘い—ポストコロナのプロテスト[19]-(松沢呉一)
「移民受け入れに伴う困難とその解消の可能性—ポストコロナのプロテスト[18]」の続きです。
End SARSってなんだ?
アフリカ最大の人口(約2億人)であるナイジェリアのプロテストはいずれ取り上げなければならないと思いながら、デカい国だけにテーマが多数あって、宗教がからんだり、別の国かからんだりで、安易には踏み込めず、軽くチェックしただけで後回しにしてました。
ここ数日、YouTubeが、「早くしろよ」とばかりにナイジェリアのEnd SARSプロテストをオススメしてくるので、「なんで今頃SARSだよ。まだナイジェリアでは流行ってんのか」と思いつつデモ動画を観たのですが、デモだけの映像を観ても、やっぱり「なんで今頃SARSだよ」と困惑するばかり。
以下の英語字幕で感染症のことではないとやっとわかりました。
警察が多数の市民を殺していて、去年と今年だけで91名に達するのだと言ってます。毎週警察に1人殺される国はまともではないでしょう。
「ガーディアン」の映像がよくまとまっています。
ほとんど彼が言い尽くしています。
SARSはナイジェリア警察の強盗対策部隊Special Anti-Robbery Squadの略です。この部隊は、1992年に創設されていて、武装強盗に対抗すべく、捜査上の特権があって、違法な捜査、違法な射殺を繰り返し(法律上認められているわけではないのですが、今までに一人として起訴された者はいないとのこと)、逮捕後の容疑者への暴行、殺人が続き、女の容疑者に対するレイプもあったらしい。
これに対して、2017年に#ENDSARSキャンペーンが始まり、SARSの横暴さを明らかにする動画が多数インターネットに投稿されます。
その一部はこの動画の中にある通り。他にも多数の動画がYouTubeで観られます。それぞれ何がどうなっているのかよくわからないですが、警察はすぐに銃を撃ち、すぐに殺すことだけはわかります。
実際に犯罪をやっていたとしても、無防備、無抵抗の相手を射殺しちゃダメですが、SARSは「iPhoneを持っていて、ドレッドレアにし、タトゥやピアスを入れている若者」というだけですぐに取り押さえるサルのような習性があって、冤罪で殺されている方が強盗団で射殺されるより多いとのことです。たしかにあの様子では取り調べも証拠固めもあったものではない。
ウソをつき続ける政府と警察
警察に超法規の特権を与えたらそうなるに決まってますよ。警察もポイントを稼がなければならないので、本物の強盗団と銃撃戦をするような危険な真似をするよりも、銃を持っていない若造をしょっぴいて殺して、「あれは強盗団の一味だ」って報告をした方が楽ですもん。そのためには反論できないように、すぐに殺した方がいい。
ただし、彼らはこれで私腹も肥やしているようで、金がありそうだと袖の下を要求して、命は助ける。
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