明るみに出さない方がいいこともある—エロと照明[下]-[ビバノン循環湯 597] (松沢呉一)
「彼女が照明を暗くして欲しがった理由が判明—エロと照明[中]」の続きです。
何してもいいよ
4度目の白目の宇宙遊泳から帰還した彼女はこう報告してくれた。
「すっごい嬉しい。ここまで感じたのって生まれて初めてだよ。自分の体の神秘に感動しているよ」
「オッパイでイケたもんな」
「うん。ビックリした。乳首がクリみたいに敏感になってたよ。こんなことってあるの?」
「たまにいる。知る限り、下でイッたあとだよね」
「ほら、見て」
彼女は暗がりで手の平をかざした。小刻みに震えている。
「まだ痙攣している」
「感じやすい体だよね」
「そんなことないって。でも、今考えると、そんなことないって思っていただけかも。私、オナニーはしないし、今は彼氏もいないから、イッたのって久しぶりだよー。1ヶ月か2ヶ月ぶり。前の店の常連さんで、1人、上手なのがいたんだよ。その人だったらイケる」
たぶん私と同じイカせ好きだ。会ったことはないが、親近感を抱く。
「でも、この店では初だよ。オッパイでイッたのも初、こんなに連続でイッたのも初、気持ちよさがハンパじゃない」
「生理前だからかな」
「それもあるかもしれない。今日あたりちょっとうずいていたから、そろそろイッておきたいなってちょっと思っていたところだったんだよ。そしたら、こーんなにイっちゃった。どうしよう、完全に仕事を忘れたよ」
彼女につくことができたのはラッキーだったが、生理前だったのもラッキーだったみたい。生理前にイキまくると、予定より早く生理が始まることがある。このコもこのあと生理になったりするんじゃなかろうか。
彼女はグッタリしたまま、こう耳元で呟いた。
「もう仕事じゃなくなっているから、何してもいいよ」
「んっ? 今、“何してもいい”って言ったか」
彼女はコクリと頷いた。
もっとしたかったよー
ところが、ここでタイマーが鳴った。その瞬間、彼女はパチッと目を見開いた。完全生還。
「あっ、素に返った(笑)。あー、もうこのままして欲しかったのにぃ。ねえ、もしこのあと空いていたら、延長して欲しい。自分からは絶対に“延長して欲しい”なんて頼まないんだけど、今日は特別だよ。もう自分を止められないよ。この先にもっと気持ちのよさがあると思うんだよね。こんな機会はなかなかないから、それを確かめたい」
「わかったよ。延長できるかどうか確認してみてよ」
「空いているといいなあ」と彼女は立ち上がってフロントにコールしたが、「あ、そうですか」と言って心底残念そうな顔を私に見せた。
「もう次のお客さんが待っているんだって、あーん、悔しいよー。したかったよー」と抱きついてきたのが愛おしい。
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