自己実現のために「差別」「文化盗用」を利用する人々—文化盗用とパクリ[14]-(松沢呉一)
「姫カットを東洋起源とする韓国メディア・和服をアジアの伝統とする中国系団体—文化盗用とパクリ[13]」の続きです。
中国系団体が「文化盗用」を悪用した事情を推測する
私は「キモノ・ウェンズデー」を妨害した「Stand Against Yellow Face」を差別団体とすることにも躊躇はないのですが、もう少し彼らに好意的に解釈してみましょう。
一部ではあれ、他国に移住した人の中には、アイデンティティの崩壊が起きることがあります。とくに自国を嫌って出た場合。簡単に新しいアイデンティティを獲得はできず、自分の存在が浮きます。
他国で生まれて育った人でも、このアイデンティティの喪失に陥るのがいます。「〜系米人」というアイデンティティで落ち着けばいいのですが、中国の場合、共産党政権の中国に自分を重ねて、スパイでも何でもやるし、香港の民主化運動を攻撃だってやる。こういう人たちはいいとして(他者には迷惑としても、本人としては依存対象として安定してましょう)、共産党政権の中国に自己を重ねられない人は米人として生きればいいだけですが、他人は肌の色で判断し、蔑視を向けてきます。
国ではなく、肌の色を自己のアイデンティティにすると、「アジア人」になります。アフリカ系はルーツがナイジェリアであろうと、ケニアであろうと、ボツワナであろうと、肌の色でまとまれる。何世代も前には対立していたとしても、対立していたことも知らない。米人一般も、そんな対立は知らない。
しかし、アジア人はそうはいかない。中には「アジアタウン」が成立していることがあるかもしれず、大久保(新大久保でなく)はそれに近いかもしれないけれど、多くの場合、中国、韓国、日本は別々の街を形成し、コミュニティは混じり合いません。
そうなっているのに、自分らにとって都合のいい時だけ「アジア」でくくり、着物は「アジアの伝統文化」として、着物の理解、浸透の機会を潰そうとします。
あくまで私の印象でしかないですが、そうとしか解釈できません。
✳︎2015年7月6日付「artnet」 「Stand Against Yellow Face」に同調する人々を中心にまとめた、「Stand Against Yellow Face」に同調する記事。
中国系がやるべきこと
「Stand Against Yellow Face」は日本に対する敵視を隠そうとはしてません。
2015年7月8日付「BBC」にこうあります。
抗議参加者のクリスティアナ・ワンさんは、アジア系アメリカ人は過小評価される傾向があり、芸者や物静かな学生など特定のカテゴリーに押し込められていると語った。
日本のせいで、アジア人は特定のカテゴリーに押し込められ、過小評価されていると言ってます。ジャポニスム(英「ジャポニズム」)を否定し、この展覧会を否定し、日本文化を否定したい熱意はわかりました。
だから、てめえらみたいな奴らが「アジア」でくくるのが悪い。「私は日本人と同じアジア人なのでなく、共産党が成立して以来何千万人も虐殺してきた中国出身です。どこに行っても大声で話す私たちは物静かな日本人とは全然違う」と言えばいいだけ。
こんな奴らが、「着物はアジアの伝統文化だ」と語る資格は一切ない。アジアでくくる必然性がある状況ならいいとして、そもそも19世紀後半フランスを中心に巻き起こったジャポニスムはその名の通り日本文化によって惹起されたものであり、それ以外の国を持ち込む余地はありません。
✳︎2015年7月8日付「BBC」 「キモノ・ウェンズデー」騒動を わかりやすく経緯をまとめた記事。この記事がきっかけの一つになって、カウンターが起きます。
(残り 1580文字/全文: 3141文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ