数字が公表されない中国の自殺—なぜ中国はほとんど唯一「男より女の方が自殺者が多い国」なのか[前編]-(松沢呉一)
なぜ胡友平さんは殺害されたのか
暴漢に立ち向かった中国人の胡友平さんが死亡。
私は心から「元気になってくれ」と思っていたので、この報を観て、ちょっと泣きました。
この事件に対して、中国の報道官は「これは偶発的事件だ。中国は世界で認められたもっとも安全な国の一つだ」なんていけしゃあしゃあと言いながら、国内ではわずかしか報道されていませんでした。
しかし、亡くなった途端に政府は事件を公表し、胡友平さんの名前と顔写真が公開され、昨日からインターネットに記事が溢れ、蘇州市政府は胡友平さんに「蘇州司法事件における勇気の模範」の称号を授与することに。利用価値があると判断したんだべな。
実際、中国では夜中歩いていても、物乞いが寄ってくるくらいで、危険なことはまずないですが、このところ連続する通り魔事件を見ると、とくに外国人にとっては安全な国ではなくなってきてます。報道しないため、国民は知らないだけ。先日の米人刺傷事件も今回の事件も、生活の苦しさを外国人への憎悪に転化させる共産党政府の方針に沿った「必然的事件」だと思えます。報道しないから詳細がわからないだけ。
この背景については、「中国まる見え情報局」が解説してくれています。
彼はいいことを言うなあ。中国の教育が作り出してきたのは独立した思考ができる人格ではなく、依存的人格だったと。この話は「私」と言うべきところで複数形の主語にする韓国人の特性にもつながります。
日本人役、米人役だけでなく、英人、仏人の役割をする中国人を成敗する動画がインターネットに流通しており、こういうものを政府は放置しています。
中国では自殺が増大
社会のストレスが増大し、その元凶である共産党批判ができない中国が私は怖いです。
中国で若年層の自殺が増えているとの話を時折見かけます。厳しい受験競争を勝ち抜いて、いい大学に入って、エリートの人生が待っているはずだったのに、卒業しても仕事がない。何のために生きてきたのかってことになり、死を選ぶのが増加しているのだと。韓国の自殺にも通じます。申し訳ないけど、人を殺すなら、自殺してくれた方がずっとマシ。
経済的に逼迫しつつある現在、親が共産党の幹部じゃなければ、いい大学を出ただけでは安泰ではないですから、こういう若者が増えていることは間違いないとして、もともと中国は自殺が多い国と認知されていないでですから、増えたと言ってもたいしたことはないでしょう。
でも、本当に多くないのか? 中国のことですから、数字をごまかしていることを疑わないではいられません。
調べてみたら、意外なことが判明。1999年に中国保健省がWHOに自殺調査を提出しているのですが、この時の調査は都市部に偏りがあって、WHOは注釈を入れて発表しています。実のところ、中国の自殺は都市部より農村部が顕著に多く、中国政府は意図的に都市部をサンプルにした可能性があります。
この時の、正しく全国の実情を反映していない調査で、「10万人当たりの自殺率」は男女の平均で13.9人でした。この数字を最新の世界ランクに当てはめると、ベスト10に入ります。ここに出した図表では男女分けしていて、すべての国で男性の自殺率が高いため、数字が多く見えてしまいますが、中国は8位に入りそうです。
農村部の数字を反映させると、さらに上位になり、「10万人当たりの自殺率」は20人に達するという説もあるため、とすると世界3位か?
それがバレるのを嫌って、実際には調査しているのに、農村部を外して、数字を下げた可能性があります。中国だったら、そのくらいやるでしょ。
しかし、その操作がWHOにも見抜かれて、中国政府は懲りたのか、WHOへの報告はこれ一回しかなされていません。そのために、自殺についての最近のデータに中国が登場しないだけでした。
✳︎2024年6月6日付「statista」
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