生成AIによる音楽の可能性と危険性—Suno AIの著作権-(松沢呉一)
「早い夏休みに聴いた「弥助やないかい」と「ヤリマンのテーマ」—文化盗用とパクリ[21]」の続きですが、文化盗用とは関係ないので、独立させました。後半は、「早い夏休みに聴いた「弥助やないかい」と「ヤリマンのテーマ」—文化盗用とパクリ[21]」に続けて出すつもりで書いてあったものです。
井口理の「踊り子」
この1ヶ月半、何をしていたのかについて、もっとも間違いの少ない回答は「寝てた」です。毎日10時間以上寝ていたと思います。連続10時間以上寝ていたのではなく、6時間睡眠を2回やったり、6時間+3時間+3時間だったり。眠いとすぐ寝る。
起きたらウンコして、メシ食って、銭湯に行って、バイトに行って、また寝て。終わり。
その合間に費やした時間が多かったのは、YouTube鑑賞でした。ある時期は都知事選、ある時期はパリ・オリンピック、ある時期以降現在まではウクライナ軍の動きに時間を費やしてましたが、通して音楽もののMVやライブもチェックしてました。
ふだんはBGMとして流していて、曲は覚えていても画面をしっかり観ていなかったり、曲は聴いていても誰の曲かわかっていなかったり、何曲かは知っていても時系列がグチャグチャなのを整理したりしてました。
King Gnuの聴いてなかった曲を聴いたりしていたのですが、その中で、思いっきし笑ったのは以下。
オリジナルがそうであるように、脱力した歌い方が向くこの曲だと、井口理らしさはあんまり出ないのですが、井口理が歌えばこうなると納得。
なお、このサムネイルの井口理は、姫カットのように見えますが、オリジナルの「踊り子」MVを観ると、姫カットではありませんでした。
これも休み中に見つけたのですが、京都の女子パンクバンド、おとぼけビーバーのギターとベースは姫カットっぽいです。
この時のギターは、姫カットかどうかわかりにくいですが、他の映像では姫カットです。
思ってたんと違いましょうが、同じバンドにふたり姫カットがいるのは激レアかと思います。。
AIをどう規制するか
井口理「踊り子」はAI生成です。ずいぶん前から、死んだ歌手の新作がリリースできるようになると言われていて、数年前には、NHKが紅白歌合戦で美空ひばりを登場させて物議を醸していましたよね。
最近では、日本マクドナルドがX用の広告動画でAIを使用して、大いに反発されてました。この反発は十分にわかります。私自身、いかにもAIを使用したサムネイルの動画は観ません。
鼻が高く、目が大きく、顎が尖ったのが美男美女の条件だからと言って、それが整形であることが歴然としている「不自然な整形」は不快感があるのと同じです。露骨に整形であることを見抜けない「自然な整形」であれば不快感がないのと同様に、AI生成であることがわからなければいいわけです。
初期のCGがしばしば不快感を生んだのに対して、今は薄くなっているように、AI美人も今後不自然さは減じていくでしょうが、今現在はわかりすぎます。指が6本だったりしますし。
それを食品の広告で使用されると、「合成の肉を使用しているのだろう」と思われてしまいます。
対して、音楽のAI生成は不自然さを感じ取ることが少ない。歌詞の誤読や元々の指定の仕方が悪くて字余りになったりするとわかってしまいますし、声の感触でそれ臭さを嗅ぎ取れることもありますが、ヴィジュアルの生成に比べれば、音楽は「自然な整形」に近い。
その特性から、また、「早い夏休みに聴いた「弥助やないかい」と「ヤリマンのテーマ」—文化盗用とパクリ[21]」に書いたSuno AIのような手軽なツールが出てきたことにより、いよいよ問題が身近なところでも生じる現実感を帯びてきます。
井口理「踊り子」の場合、タイトルに「井口理 (King Gnu) AI」とあり、概要欄にもその旨が書かれ、曲の途中にも音声で説明されていますから、9割以上の人は気づきましょうし、その前にサムネイルを見て、「井口理のソロ作品が出たのか」と思う人はまずいないだろうと思うのですが、この曲の一部を切り取って、TikTokかなんかに転載してアクセス稼ぎをするのがいるかもしれない。
ということから、対策を講ずるべきとの意見も高まっていますが、簡単ではないでしょう。
✴︎2020年2月4日付「東京新聞」
(残り 1800文字/全文: 3732文字)
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