松沢呉一のビバノン・ライフ

酸欠少女さユり・大宮イチ・ユズキカズ・松岡正剛・田中美津・大崎善生—本年5月から9月までの訃報巡り[前編]-(松沢呉一)

 

ファンではないけれど、惜しい人を亡くしました

 

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数日前に酸欠少女さユりが亡くなったことを知りました。公表されたのは9月27日ですが、亡くなったのは9月20日。28歳は若すぎです。

 

 

「酸欠少女」と名乗るセンスに滲むメンヘラっぽい女子の歌は嫌いではないのですが、歌の内容に比して、声が可愛すぎる感があって、聞き込むまでには至ってませんでした。

とくに思い入れがあったわけではないのですが、それでも、今年になってから機能性発声障害で歌えなくなっていたとの話を亡くなってから知り、あまりに切ない。機能性発声障害はポリープによるもののように、原因がはっきりしているタイプであれば、治療の目処も立ちますが、原因がわからないタイプだと、「これが一生続くのか」と不安でいっぱいになりそうです。

歌うことで自分を見出し、歌うことで自分を維持していたように見えたので、生きる意味を失って、この世で迷子になったのでありましょう。

私も連続でパソコンが壊れた時は、「ビバノン」を書けなくなって絶望のどん底に堕ちましたもん。原因が皆目わからなかったですし。しかし、死にたいなんて思わず、ひたすら寝てました。寝て起きたら、小人さんがパソコンを直してくれているんじゃないかと期待して。連日裏切られました。

 

 

同日、大宮イチも亡くなっていた

 

vivanon_sentence酸欠少女さユりをきっかけに、Wikipediaの訃報欄を見ていたら、同じ日に、大宮イチも亡くなってました。

私が彼と交流があったのは、役者になる前のことです。1990年代。交流があったと言っても、2人で会ったことはなく、電話番号も知らないながら、何かのイベントや集まりで顔を合わすことがよくありました。根本敬とも親交があったはずです。

知り合った頃にはハナタラシの活動はもうやっておらず、別のユニットをやっていましたが、そういった活動のつながりではなくて、気づけばそこにいる存在。見た目はいかついし、怒ると怖そうですが、普段は腰の低い温和な印象でした。

彼もまた死因は公開されていないのですが、9月17日に所属事務所がなないろに決定したところだったので、本人も予期できない死だったのでありましょう。年齢も公開されてませんが、私より数歳下だったと思うので、50代末か、60歳くらいか。突然心臓が停止してもおかしくない年齢ではあります。

✴︎なないろのサイトより大宮イチ

 

 

訃報を遡る

 

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酸欠少女さユりの訃報はYouTubeで知りましたが、SNSをやらなくなって久しいので、大宮イチの訃報は知らずにいて、これを契機に溜まっていた訃報を処理すべく、さらにWikipediaを遡りました。

9月10日に、漫画家のユズキカズが亡くなってました。面識はないですが、単行本は何冊か読んでます。全然世界観は違いますが、絵のタッチからわかるように、ユズキカズはつげ義春フォロワーです。強制夏休みの間に読んでいた漫画がきっかけで、つげ義春的な漫画表現とそれを求める時代について考えていたところでした。

 

 

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