私にとっての卵かけご飯は貧乏飯—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[前編]-(松沢呉一)
卵かけご飯ごときで騒ぎすぎでは?
前に「お好み焼きが日本料理の代表かのようにアピールするのはどうも納得しにくい」という話を書きました。私もお好み焼きは好きですけど、カレーやラーメン、とんかつほど頻繁に食うものではなく、すき焼きや寿司のように金が入った時に贅沢をする感覚もなく、部活のあとで食うチープなものです。
同じく、卵かけご飯をアピールすることにも照れがあります。子どもの頃から食い続けていて、好きでもあるのですが、納豆とともに食うか、牛丼に加えるかで、卵だけでご飯を食べることはほとんどありません。旅館やホテルの朝食では焼鮭のようなおかずがありますから、卵かけご飯だけ取り上げてもなあとの思いが拭えません。卵だけで済ませることがあるとすれば、よっぽど金がない時くらい。それでも、ふりかけや梅干しは投入します。
16種類の卵を扱っている文京区千石の喜三郎農場は行ってみたいですが、卵かけご飯をたらふく食べたいというより、卵の食べ比べをしたい。他にも美味しそうな料理がさまざまあるので、飽きそうにないですし。
あの店の卵ならわかりますけど、その辺の卵はそこまでの魅力はありません。「母国では、生卵なんて怖くて食えない」と言いながら外国人観光客がガツガツ食っていたりするのを見ると、宿の朝食でいっぺん食っておけばええじゃろと思います。他にも美味しいもんがあるんだからさ。
一度も生卵を食べたことがなく、帰国したらまた食えなくなることを想像すると、日本で食えるだけ食っておきたくなるのはわからんではないのですが、現に日本で可能になっているのだから、各国で衛生管理をしっかりやって、生卵を安心して食べられるようのすればいいだけでは?(下に書いているようにEU諸国ではそうなりつつあります)
生卵で食中毒になるのは、鶏が卵を産む際に殻に糞がつき、卵の殻を割る際にサルモネラ菌や大腸菌が混入するためなので、食べる前に洗うなり、消毒するなりすればよく、これなら個人でもできることです。殻にヒビが入っていて、中に菌が入り込むことがあるでしょうから、ヒビ割れた卵は生で食わないようにすればいい。また、時間が経つと、菌が増殖する可能性があるため、新鮮なものを選べばいい。
米国の卵は恐ろしい
そう思っていたのですが、その程度では済まないくらいに汚染されていることがあるようで、先月も、米国では、9州で65人がサルモネラ菌による食中毒になって、FDAは同じ農場から出荷された卵に回収命令を出しています。
食中毒になった人が全員生卵を食べたとは思いにくく、原因になった卵すべてにヒビが入っていたとも思えません。軽く熱を通した半熟でも危険ということなのでしょう。
米国で卵を食べる際は、熱をしっかり通す必要があり、しかも、FDAは、殻がついた状態で、石鹸水で洗うことを推奨してます(今回の食中毒騒動を受けてのことではなく、「常に」です)。
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