松沢呉一のビバノン・ライフ

中居正広は擁護できないが、佐々木恭子アナは少し擁護できる—文春砲第二弾を受けて-(松沢呉一)

中居正広9千万円騒動は気になるけれど、なおわからんことだらけ—テレビ局が消える時代」の続きです。

 

 

中居正広、最後の大活躍

 

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中居正広の件で週刊誌やスポーツ紙、インターネットは大盛り上がりで、一般の新聞も中居正広がテレビから消えた事実については報道。中居正広は最後にして人生最大の娯楽提供に大活躍。

CMに起用していた企業は迅速にその痕跡を消し、テレビ局も番組を粛々と消しているのに、ワイドショーは一言も触れないのが「テレビは終わった感」を一層醸し出しておりますね。大谷翔平の自宅まで晒した調子で中居正広の自宅や実家に押しかけ、中居正広とセックスした相手を探し出して、「どんな行為をするのか」「どんなチンコだったか」まで聞き出せば、視聴率は爆上がりなのにねえ。

ジャニー喜多川の件で各局反省したふりをしたのも嘘っぱちだったのがバレバレ。そんなこったろうとは思ってましたが、こうも鮮やかに視聴者を裏切るとは思わなんだ。

テレビの虚妄を炙り出した点でも、中居正広はお茶の間に対して最後の貢献をしています。もともとテレビが好きな私としても、テレビの最期を見届けられて感無量です。うちにはテレビがないですが。

日テレ「ザ!世界仰天ニュース」でMCの中居正広の存在を消し去った技術が感心されていて、世の中には、インターネットを一切チェックしない人、かつ紙媒体も一切見ない人もいますけど、テレビに齧りついている人ほど、「なんか起きてるぞ」と気づくでしょうから、そんな人でもテレビへの不信感を高めていましょう。

そういう人たちの疑問に答えるためにも、フジテレビや中居正広は記者会見をすべきとの声が出てますが、そうしたところで、「何があったのか」「相手は渡邉渚・元アナウンサーか」「本当に9千万を支払ったのか」「その金額はどう決定されたのか」については、口外禁止条項があるので語れない。フジテレビは口外禁止条項に縛られないとしても触れにくいでしょうが、そこに触れずして説明すべきことがありますから、記者会見した方がいいと思います。

通常、和解したら、その当事者はもちろん、当事者の証言が得られない以上、第三者も蒸し返さないのがルールですが、「中居正広9千万円騒動は気になるけれど、なおわからんことだらけ—テレビ局が消える時代」に書いたいくつかの事情で、今回はそのルールをすり抜ける形で情報が出てしまって、中居正広としては9千万円をドブに捨てたようなものです。その点だけは同情します。

その結果、「和解しても意味がない」と学習して和解金を出し渋る人や、「和解しても情報を外に漏らしてもいいのか」と学習して約束を反故にする人が出てきますから、あんまりいいことではないようにも思います。私も金輪際和解金は出しません。今までも出したことないけど。

金額まで公にされて(どこから漏れたかは察しがつきますが)、「そんなにもらえるんだったら私も私も私も私も私も」になって、中居正広のところには女子アナやタレントからの和解交渉メールが殺到しているかもしれない。週刊誌にネタを売っても謝礼は知れていて、謝礼なしのこともありますから、和解した方がコスパがうんといいです。その上でバラせばいいんですから。

✴︎2025年1月7日付「朝日新聞デジタル」 「ザ!世界仰天ニュース」に引っ掛けて、ここまでの経緯をざっと説明してます。こんな美味しいネタを新聞も放置できなくなったようです。

 

 

文春砲第二弾がフジテレビをも追い詰める

 

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中居正広が松本人志と違うのは、擁護の声がほとんど出ていないことです。和解金9千万円を払っている以上、相当のことをやらかしたことは確定しているので、擁護の余地がないってこともあるでしょう。破格の和解金を払ったことがここでも悪い方向に作用しました。

あれだけ活躍していたのですから、スタッフ受け、お茶の間受けは悪くなかったのでしょうが、いざこうなると、「いかにもやりそう」と思わせてしまうキャラも影響してそうです。私も悪い印象は持ってなかったですが、「防音が完璧なマンションに住み、女子アナやタレントを騙して自宅に連れ込んで、赤ちゃんプレイやスカトロプレイでもやっていたんだべな」とか思いますよ。

また、「なくてはならない存在」というわけでないため、リスクを背負ってまで擁護する価値がないと判断する人が多いかもしれない。テレビとしても、容易に代用が探せますから、中居正広を切ることにさしてためらいはないでしょうが、それだけでは終わらず、テレビ局の責任も問われ、どうしていいのかわからない状態じゃないですかね。

「週刊文春」の第二弾によって、役員クラスも当時相談を受けて、話し合いをしていたことが明らかにされたのがフジテレビには痛打です。フジテレビの「一部週刊誌等における弊社社員に関する報道について」を読み直すと、どういう意図で書かれたのか読み取れます。

 

 

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