手抜き・技術不足・ルール無視・人命軽視・証拠隠滅—中国らしさが横溢したバンコクのビル倒壊-(松沢呉一)
「ミャンマーの地震・タイの地震・中国の地震と爆発音—震度3で倒壊する建物を建造する中国の国家事業」の続きです。
基準に満たない鉄筋と規定外の使用
ミャンマーの地震被害は悲惨で、死者数が見る見る増えていて、最終的には1万人を超える見込みが出ています。ミャンマー料理屋ではそろそろ募金を集めているだろうし、コンビニでも始まりそうですが、気になることがあります。
内戦状態にある民主勢力は休戦を宣言したのに、軍はここぞとばかりに空爆を続けています。義援金は軍に入って、民主化側には渡らないでしょう。日本に来ているミャンマー人は民主化支持が多いので、彼らに直接渡した方がよさそうです。
中鉄十局については、さらに呆れた事実が出ています。タイ産業省が倒壊現場から持ち帰った鉄筋を調べたところ、基準を満たしていない鉄筋が発見されています。また、本来使用すべき規格とは違う鉄筋が使われていたことも判明しています。
複数のメーカーが納品しているため、どのメーカーが基準以下の鉄筋を納品したのかまでは特定されていませんが、可能性が高いのは、シン・ケ・ユアン・スチール社です。
同社は2011年に設立され、中国企業ではありませんが、株の65パーセントは中国籍のジエン・チー・チェンが所有し、それ以外にも中国人が株を所有しているので、中国系企業としていいでしょう。
この会社は、数ヶ月前に問題を起こしています。2024年12月18日、工場で火災があって死者を出しており、その検査で安全違反が発見され、この際に製品の鉄筋の品質にも問題が見つかってます。そのため、経営者が罰金を課せられ、製品は回収命令が出され、工場には閉鎖命令が出されました(一時的なものか、永続的なものか不明)。
今回使用されていた低品質の鉄筋が同社のものだとすると、回収されていなかった可能性があります。あるいはすでに使用されていたため、回収が困難だったのか。
製造したのは中国系企業、使用したのは中国国有企業ということになると、これはもう中国という国家の問題です。国有企業のビルが特別に崩壊したってだけで、中国という国家の問題ですが。
✴︎2025年4月1日付「THAIRATH Money」
高層ビルとともに中国共産党の思惑は潰えたか?
タイでは小規模な被害が多数出ていても、大きな被害は中鉄十局のビルだけであり、死者も行方不明者もこのビルに集中しています。あのビルでは100人前後が働いていて、わずかに逃げられた人もいましたが、行方不明者は絶望的ですから、死者は90人前後になりそうです。
他に気を取られないため、建設省はこの倒壊事故の原因究明に意欲的ですし、メディアもここに集中することができており、ここから中国企業がタイに進出していることの背景や問題点を深掘りしています。
建設現場で働いていた労働者たちは全員中国人だと見られ、タイ人じゃなかったのは幸いですが、安さに釣られて中国企業に依頼しても、自国へのメリットが少ない。材料も安い中国製を使うので、その点でもメリットがない上に粗悪ですから安全性に問題が出やすい。
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