限界突パ

【独占インタビュー】西武・渡辺久信GMに聞く。「FA取得選手が移籍することをしょうがないという考えはない」【前編】

画像提供 西武ライオンズ

昨季はリーグ3位だった西武が最下位と苦しんでいる。相次ぐFA移籍やメジャー挑戦などにより、ぽっかり空いた穴を埋められていないのが実状だ。

さらに今季は開幕から不運続き。3月のWBCで負傷した源田壮亮が出遅れ。開幕スタメンに名を連ねた外国人のペイトンがケガのために離脱した。4番を打つはずの山川穂高はプライベートの事情で戦力構想外。3、4月の月間MVPを獲得した中村剛也も脇腹を痛めて5月27日に抹消となった(6月23日には復帰)。若手に頼らざるを得ない状況だが、なかなか壁を破れない苦しい日々が続いている。

厳しい言い方をすれば戦力不足と言える。
今のチーム状況をどう捉えるべきなのか。西武は2019年からGM制をしいているが、メジャーリーグとは異なり、GMの役割が浸透していない日本の野球界において、どのような役割を担っているのだろうか。現在のチーム事情が決して良いとは言えない中、渡辺久信GMに話を聞いた。

選手、コーチ、監督として数々のタイトル奪取に貢献した渡辺GM。西武の古き良き時代を知る男は何を語るのか。(取材日 6月30日 文・氏原英明)

ーー監督を退かれてからシニアディレクター、編成本部長を歴任され今やGMに就任して5年になると思うんですけど、これまで5年間を振り返ってもらえますか。

渡辺 GMとはいえアメリカとはちょっと違う仕事という印象を受けています。アメリカのGMは編成の部分から、選手起用まで強い権限がある。オーナーからお金を引き出してその予算の中でやりくりしているところがあると聞いていますが、日本のGMとはちょっと役割は異なるのかなという感じはしています。そういった意味では今まで5年間やってきて、1番は編成の部分でチームを優勝させるためいい環境を作っていくか。そういう環境作りをやってきたというのが今の現状ですね。

ーー環境というのは具体的にはどういった部分のことですか

渡辺 選手の補強は簡単なことではないですが、選手がいないと優勝するのは難しい。ですので、1軍から2、3軍まで状況を見て、足りない部分、必要なピースを整えようとしてきました。それはドラフト、外国人選手獲得、トレードを含めた全てからです。ただ、1年だけ優勝すればいいわけでもないし、将来も考えていかなくちゃいけない。それは常に頭にある。当然、FAについても考えていかないといけないので、プラスだけじゃない。戦力のマイナスも考えなくちゃいけないので、頭が痛い部分もあります。

ーーやはり、1年だけじゃなく、3年後、5年後を常にイメージしているんですね

渡辺 もちろんイメージしているし、それは私個人だけじゃなくて会社として、チームとしてやっている。それはつまり永続的に常勝軍団、常に優勝するのは難しいけど、優勝争いできるチームを構築していくことがすごく大事というのがあります。しかし、今は戦力を安定して持つのが難しい時代でもある。昔の西武のように、10年同じメンバーで戦うことができたら、それは強いチームになる。でも今はそういう時代じゃないから、その中で永続して強くするためにはどうするか。そこには育成も入ってくる。1軍は目先の勝利が大切で、1年1年が勝負。ファンもいるしね。1年1年が大事なんだけど、そのためにも、やっぱり育成をしていかなくちゃいけない。先々のことを考えていかないといけないというのは常に頭にある。

ーーひと昔前の監督は編成を担ってきたところがありました。勝つことを第一の条件としてチームがずっと強くなるためにどういう編成するかまでやらされていた。そういう時代からGMなどの部署ができてきて、変わってきたところはありますか。

渡辺 もちろん。そうだけど、監督の意見も聞いてはいます。ただ、聞くけど、基本、別個で考えていますね。

ーー辻発彦前監督と松井稼頭央監督と接する中で、渡辺GMは監督経験者ということで、気をつけて考ていることはありますか

渡辺 これ、ちょっと矛盾しちゃう話なんだけど、現場は常に現場を見ているから選手と接する時間は長いわけですよね。それと我々会社側フロント側も試合や選手を見ているけど、そこまで深くは接してない。グラウンドに行ったり、選手たちと挨拶はするけど、一番は監督・コーチ含めたスタッフが選手のことをよく見ている。だから、あまりこちらからごちゃごちゃ言わないようにはしている。

――介入はしない、と。

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