限界突パ

”育成の西武”へ大きな舵取り。低迷・ライオンズの改革が進行中!

順位は最下位に低迷。主砲・山川穂高の不祥事の件は不起訴になったが、無期限出場停止処分。過去13度の日本一を果たした西武を取り巻く環境は非常に厳しいものに見える。

しかし、それは一部分かもしれない。

9月2日。プロ野球の中では珍しく、一般公開の形式で開催された「入団テスト」を取材すると西武ライオンズの暗いニュースとは裏腹に、発展への足跡が聞こえてきた。

「メジャーの(ドラフト)コンバインみたいにしたいというのがあります。パワーがある選手、足が速い選手はいると思いますけど、そこではない数値を見出したい。その中に隠れた才能がいないかなと。今回で2回目ですけど、これが正解ではなく、より良いものを見つけ出していこうという試みでもあります」

そう語ったのは西武のチーム統括部長の市川徹さんだ。チームを屋台骨として支えてきたキーパーソンだ。

ドラフトコンバインとはよく考えたものだ。アメリカでは野球のみならず、バスケットボールなどで開催しているイベント。ドラフト候補選手などを呼び、身体能力のテストや面談をするというもの。日米においてスカウティングの役割は試合や練習を視察してパフォーマンスを見て獲得するかを検討するが、そこだけでは測れないものをドラフト・コンバインではできるのだ。

西武の入団テストがそんな先取りをしているとは思わなかった。

実は、この日、広報の1人から「育成の西武」を看板にしていきたいという切実な思いを聞いたのだが、言ってみれば、球団が今、必死の思いで取り組んでいる要素なのかもしれない。

西武に限らず、各球団には毎年、多くの選手が入団する。地方に駐在するスカウトが好素材の選手に目を光らせ、ドラフトで指名して、獲得に至る。

しかし、ドラフトとは選手を獲得して終わりではなく、そこからどういうふうに育てていくかは課題でもあるのだ。これは意外に語られないことだが、「スカウティング」と「育成」を同時進行で考えられないチームに未来はない。

いわば、西武はそこへ猛烈にアプローチを進めてきているというわけだ。それも、これまでのようなスカウトの眼力やコーチの経験だけに頼ったものではなく、今までは注目してこなかった数値を新たな引き出しにしているのだ。

入団テストというと、多くの人が想像するのは、ある基準をクリアした選手が、実践形式に臨む。そこでパフォーマンスや内容が評価されて、ドラフト下位指名や育成の指名を勝ち取る。いわば、トライアウトのような形で、選手の力量を吟味するというものだ。

ところが、この日の入団テストはまるで毛色が違った。なんと、計測する時間の方が圧倒的に長かったのだ。

計測はman in the box、メディシン・ボール投げ、50メートル走、垂直跳び、ワットバイク、遠投などである。

(残り 1602文字/全文: 2743文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ