「首脳陣の総意だった」。西武・平石ヘッドコーチが明かす、ルーキー蛭間拓哉、開幕2軍スタートからレギュラー定着までの背景。
投手戦の息の詰まる試合展開の中、先制適時打を放ったのはルーキーのバットからだった。
9月5日の西武対オリックス戦のことだった。
0−0の8回表二死一塁からバッターボックスに立った蛭間拓哉がバットを一閃すると左翼線を破る二塁打。一塁走者の源田壮亮が長駆ホームイン。ルーキーのバットが先制点を叩き出したのだった。
続く4番の渡部健人が左翼スタンドへ放り込み3−0。
試合はこのまま西武が勝利した。
ここのところの蛭間の活躍には目を見張る。
開幕前に2軍へ降格して、開幕からのデビューはお預けとなったが、6月23日に一軍初昇格を果たすと、それから一度も降格することなく1軍に定着している。
走攻守、三拍子揃った選手として2022年のドラフト1位で入団。
浦和学院、早大ではキャプテンも務め、将来のリーダー候補として期待が高い。一見、生真面目なふうにも見えるが、実際は明るい。ある試合で、お立ち台に上がった時は、尊敬する栗山巧が活躍した日でもあり「もしかしたら、栗山さんと一緒にお立ち台かもしれないとテンション上がりましたが、甘くなかった」と笑い飛ばした。
とはいえ、ルーキーイヤーの蛭間の起用を見ていると、実に不思議ではある。
キャンプから1軍入りしたものの、オープン戦で結果を残すことができずに、2軍に降格した。大学時代からの弱点だった速い真っ直ぐへの対応ができずに、再調整する事になったのだった。
ファームでは開幕から調子は良かった。3割を裕に超える打率を残すなど、1軍が低迷していただけに、ファンからの昇格の声は少なくなかった。ただ、当時、西武のファームは外野陣が軒並み好調。入れ替わり立ち替わり、1軍に昇格していくほどで、蛭間に声が掛かったのは、ファームの外野ではシンガリに近いタイミングだった。
1軍昇格早々の楽天3連戦でプロ初本塁打。大学の先輩・早川隆久からマークしたものだったが、しかし、それからの蛭間の出番が大きく増えることはなかった。スポットのタイミングでスタメン起用。打つことも少なくなかったが、かといって、レギュラー定着とまでは行かなかったのだ。
「1、2軍の首脳陣、総意の意見があった」
そう理由を説明したのは1軍のヘッドコーチを務める平石洋介だった。
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