限界突パ

疲労の大きい二遊間のスターであるからこそ――山田哲人や源田壮亮の復調のカギはマネジメントでの負担軽減にあり?<SLUGGER>

始まりは山田哲人(ヤクルト)だった。
開幕直後の3月30日、山田はコンディション不良で登録を抹消された。かつてトリプルスリーも達成したツバメの精神的支柱は4月20日に戦線復帰したものの、まだ快音を響かせてはいない。

西武の二遊間を務める外崎修汰、源田壮亮も開幕から調子が上がらない、遊撃の源田は主に9番を務める打撃が上向かず、守備のミスも目立つ。二塁の外崎は開幕直後こそ良かったものの、4月20日に背中を痛めて以降は状態は良くない。同24日のオリックス戦では、珍しく2人揃ってスタメン落ちした。

さらに、今季から三塁にコンバートされたロッテのキャプテン中村奨吾も、開幕から打率1割台と低空飛行だ。少し持ち直したとはいえ、いつスタメン落ちしても不思議ではないほどパフォーマンスが悪い。

源田は早生まれ(1993年2月生まれ)だが、みんな92年生まれ世代の同学年だ。千賀滉大(メッツ)、甲斐拓也(ソフトバンク)、山崎康晃(DeNA)らも同世代にあたり、坂本勇人(巨人)をはじめとする88年生まれ世代に続く当たり年だ。

しかし、30歳を超えてきた彼らのパフォーマンスが、今季は良くないのだ。しかも、共通しているのは彼らは二遊間の選手たちだということだ。

ここ数年、「二遊間の選手の疲労をどう補うか」がテーマになるのではないかと配信してきた。上記の選手たちに共通するのは年齢やポジションだけでなく、本拠地球場が人工芝であるという点である。

「日本に帰ってきた時は、疲労については考えましたね。アメリカでプレーした選手は結構、日本に帰ってくると怪我も多かったでしょう」

そう語っていたのはロッテの井口資仁前監督だ。現役時代に人工芝について話を聞いたところ、故障のケアにはかなり気を使わなければならないと語っていた。

意外に語られることが少ないが、実は二塁手の運動量は半端ない。昨今は左の強打者が多いから、広い守備範囲をカバーしなくてはいけないし、中継プレーやカバーリングなど、とにかく動きの量が普通ではないのだ。長打を浴びた時は外野深くまで追っていくし、ZOZOマリンスタジアムなどのようにとてつもなくファールグラウンドが広い球場もある。

そして、日本における二塁手は出ずっぱりなことが多い。

山田は2014年にレギュラーを獲得してから、ほぼ毎年のように130試合以上に出場してきた。大卒や社会人出身の違いはあるにせよ、外崎や源田、中村も定位置を得てからは出ずっぱりだ。

チームで主力を張って毎試合出場するだけでも相当な疲労があるというのに、さらに二塁手というのは負荷が高い。山田哲人は侍ジャパンの常連でもあったから、その疲労度は計り知れない。30代でパフォーマンスが落ちていくのも無理のない話と言えるかもしれない。

かつてロッテの黄金期を作ったボビー・バレンタイン監督は、よく野手を休ませていたというのは有名な話だ。ロッテの元リリーバー、荻野忠寛がこんな話をしている。

「たとえば西岡剛がある試合で3安打するとするじゃないですか。すると次の日はスタメンじゃなかったりということがありました、なんで出さないんだとか批判されていましたけど、3安打したということは走者に出ていて走っているので疲労がある。マリンは人工芝ですし、すごく気を遣っていた」

アメリカ人ならではの発想だ。メジャーの試合を見ていても、主力選手をDHでローテーション起用して休養を取らせるなど、きめ細かい配慮が見られる。日本でもそのマネジメントが必要なのかもしれない。

昨年、西武の源田がDHで出場した試合があった。「守備の名手・源田がDH?」とネットでは話題になったが、松井稼頭央監督は疲労などを考慮して決断した。その日、源田は無安打だった。

翌日の練習でグラウンドにいた辻発彦前監督が、源田に「げん、DHだとリズムがつかめんだろ」と声をかけていたのをたまたま見たが、チームの狙いを感じていた源田は苦笑いするしかなかった。

山田哲人が開幕直後に離脱し、これまで西武の鉄壁のレギュラーとして支えてきた源田、外崎も同じ時期にスタメンから外れるという事態は、NPBの二遊間の現状に何かを投げかけている気がしてならない。

ヤクルトも西武もロッテも、彼らに休んでもらう余裕はない。そのチーム事情は理解するが、カギになるのはいかに選手の疲労をとりながら、パフォーマンスを維持する起用法を考えるかだろう。

西武は開幕3カード目の日本ハム戦で、点差の開いた試合が2試合続いた際に、外崎、源田を交互に試合終盤にベンチに下げていた。西武首脳陣も二遊間の疲労を感じいてるのだろう。

彼らがチームの顔であるからこそ、いかに休ませるか。長年の功労者の復調のカギは、マネジメントにあるのかもしれない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ