文武両道で京都の頂点に!秋の優勝校・立命館宇治はどんな野球部なのか
春3回、夏4回の甲子園出場回数を誇る京都の立命館宇治高。近年も2023年夏の甲子園出場、昨秋の近畿大会8強と安定して上位に勝ち進んでいる。
昨夏に同じ京都の京都国際が全国制覇を果たした中、2年ぶりの甲子園出場を目指す立命館宇治の実態に迫った。
チームを率いているのは里井祥吾監督。高校時代は鳥羽で2年春から3季連続で甲子園に出場した実績を持つ。立命館大を卒業後、高校時代の恩師である卯瀧逸夫氏が立命館宇治の監督になったことに伴い、同校のコーチに就任。2015年夏から監督を務めている。

里井祥吾監督就任後に甲子園出場を果たした際の記念プレート
高いレベルで文武両道を実践
まず、立命館宇治の特徴として、「高い水準で文武両道を目指そうという志の生徒が多い」と里井監督は話す。スポーツ推薦で入学する場合は、5段階評価でオール4が基準になるそうだ。厳密にはもう少し低くても合格できるが、入学してから勉強についていくことを考えると、それくらいは必要になってくるという。
最速146キロ右腕の柴田淳之介(2年)はスポーツ推薦で入学した選手。練習後の疲れた中でも毎晩の学習は欠かせないと語る。
「課題が多くて、毎日の練習が終わった後に勉強しています。課題に1時間くらいかかって、小テストが多いので、それの勉強もしています。朝練の後にちょっと時間があるので、その間を勉強の時間にしています」
1学年の部員数は25人前後。過半数が学業推薦で入学してくるが、この場合はオール5に近い成績が必要になる。里井監督によると、学業推薦で入学した選手がレギュラーを多く占める年が強い傾向にあるそうだ。
その代表例が23年夏の甲子園出場時に2年生エースだった十川奨己(現・中央大)。彼は中学時代の成績がほぼオール5だったという。公立の地区トップ校に入学できる学力を持ち、なおかつ野球の実力もある中学生がどれだけ入ってくれるかが、立命館宇治の命運を握っているところもある。
多くの選手が大学で野球を継続
高いレベルの文武両道が求められる分、一定の成績を維持できれば、立命館大に進学できるのが立命館宇治の強みだ。卒業後には内部進学して、硬式や準硬式で野球を続ける選手は多くいる。
進路が保証されている分、「こちらとしてもブレーキを踏んでやれる」と里井監督は言う。例えば、昨秋には柴田が右肘を痛めた。府大会でも登板できないことはなかったが、将来を見据えて無理はさせなかった。これが他の学校であれば、大学の推薦を勝ち取るために多少の怪我でも試合に出場せざるを得ない場合もあるが、立命館宇治にはその必要がない。その意味では長い目で野球に取り組むことができる。
だが、それは必ずしもメリットばかりというわけではない。安心がガムシャラさを阻害することにもなり得る。秋にエースナンバーを背負った道勇壱心(2年)はライバル校を引き合いに出して、違いをこう語った。
「京都国際は僕たちのチームとは違って、自分たちで野球を頑張って大学からの推薦を得られないと大学で続けられないので、そのハングリー精神が凄いなと思います」
里井監督も選手に対抗意識を持たせるために「進路実現のために自分のアピールにどれくらい力を入れてるかと言ったら、君らの温度差とはやっぱり違うと思うよ」と言うこともあるそうだ。他とは違う事情を抱えながら甲子園を目指している。

就任10年目の里井祥吾監督
アップデートを重ねてチームを強化
恩師である卯滝前監督の教えをベースとしつつも年々アップデートを欠かさない里井監督。近年は独自の球数制限やリエントリーが可能など、特殊なルールで行われているリーグ戦の「LIGA Agresiva」に参加したり、髪型を自由にするなど、時代や校風に合わせながら新たな試みに挑戦している。
「人からどう見られているか、どういう自覚が求められているかという一環で、髪の毛を一回伸ばしてみようかとか、休みを定期的に与えてみようとか、まだ未成年の生徒とはいえ、大人として扱うというくらいのスタンスを保ってやりたいという感じですね」と里井監督は言う。大学に進めば、高校以上に自主性が求められる。そう考えると、里井監督の方針は卒業後に間違いなく活かされるはずだ。
昨秋の関西学生リーグは荒井豪太(4年)が最優秀投手のタイトルを獲得、岩間倫太朗(2年)と星野大和(2年)が打率3割台と立命館大で硬式を続けた卒業生の活躍が目立った。高校での育成は着実に実を結んでいる。
高校野球には春、夏、秋と公式戦が3つあり、「せめてどれかはベスト4以上という目標を立てています」と里井監督は言う。近年は毎年のように上位まで顔を出しており、それはクリアしているだろう。昨秋は府大会を制して近畿大会8強入りするも準々決勝で市和歌山に6回コールド負けを喫して補欠校止まり。夏は2年ぶりの甲子園を目指す。

主将の伊藤央太
「秋は市和歌山に点を取られて、勢いに乗らせたら止められなかったので、そこを食い止めて、こっちの有利な流れで試合を進められるようにミスを少なくするチームになっていけたらと思います。長打が出るチームではないので、つなぐ野球をして、守れたらと思っています」と主将で4番捕手の伊藤央太(2年)は夏に向けて意気込む。京都国際の夏連覇を阻む一番手候補であることは間違いない。