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世界にひとつだけの花となれ━━西日本短大付・西村慎太郎監督(前編)

「不可能」を「可能」に変える男、新庄剛志

高校時代の西村監督は、残念ながら甲子園出場を果たすことはできなかった。3年夏は、のちに日米球界で活躍する新庄剛志(北海道日本ハム監督)とともに主力選手のひとりとして活躍したが、決勝で福岡大大濠に4-6で敗れ準優勝に終わっている。
球界屈指の人気者となった同級生の活躍は、西村監督にとっては大きな誇りであり、刺激でもある。新庄監督が就任した当初、西村監督は「新庄は確実に人が育つ土壌を作るだろう」と言い切っていた。

「プロ野球選手になっている段階で、能力がない人はいないと思うんですよね。それでも、数少ない人しか生き残れない世界じゃないですか。そういう中でも、新庄はみんなのやる気を引き出し、人を活かしている。新庄がそういう環境を作っているからです。それは選手にかぎった話ではなく、コーチや裏方さんに対しても一緒だと思います。もちろん勝てば監督である新庄の評価になるのでしょうが、彼は北海道日本ハムファイターズという組織で働くすべての人たちの評価を上げることに、全力を挙げているように見えるんですよね。これってプロ野球の世界だけでなく、人の上に立つ人が絶対に持っていないといけない部分ですよ」

昨年まで2年連続で最下位だった日本ハムだが、今季は若手の活躍などもあってシーズン序盤からAクラスをキープしている。新庄監督が2シーズンをかけて撒き続けてきた種が、実を付け始めてきた結果なのだろう。
それだけではない。西村監督は、新庄監督の人材活用術の成せる業なのだと強調する。そして、こうも付け加えている。

「何よりも彼の一番凄いところは、彼がいると“無理かな”と思うようなことでも、できそうな気になってくるんです。これはリーダーが備えるべき最低条件だと思います。会社の社長さんも一緒ですよね。部下に“この人の下でなら、良い仕事ができるのではないか”と思わせられるかどうか。人には変わっていく瞬間があります。そこを見落とすことなく、人はこうやって認められていくんだよということを明確にしてあげれば、その積み重ねの中でやるべきことが見えてくるし、人同士が活かし合うようになっていくのです。そのことが同級生の僕には数年前から見えていました。彼の選手の起用法や他球団からの選手補強を見ていると、本当によく選手たちのことを見ているなと感じます。でも、高校の時から新庄にはそういうところがあったので、じつにあいつらしいなと思いますね」

そんな新庄監督のマネジメント方法を、高校野球の指導に置き換えている部分もある。現在の西短野球部は全学年で67人の部員が在籍しているが、前述のようなそれぞれの個性を活かしたチーム作りを進めていくうえで、とくに新庄監督のやり方は参考になっているのだという。

「チームに対する貢献の価値観も、試合に出て投げた、打ったということだけでは片づけられませんからね。役割の違うみんなをどう活躍させるのか。どこにスポットライトを当てればいいのか。チームが勝つためにはそういうことも考えます。そういう部分は新庄を見ながら、自分なりに高校野球の指導に変換して、子供たちの気持ちが常に前を向くように工夫をしているつもりです」

(後編へ続く)

野球部員、演劇のステージに立つ!━━西日本短大付・西村慎太郎監督(後編)

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