手応えは「銀二・古賀バッテリー」の時より上だった━━あと一歩の壁④福岡大大濠・八木啓伸監督(前編)
夏3度、春5度の甲子園出場を誇る福岡大大濠は、福岡県南部地区を代表する私学の雄。とくに春秋の九州大会を連覇した2016年以降は安定した成績を残し続け、2017、2021年のセンバツに出場し、いずれも8強進出。
前述したとおり九州大会でも優勝2回、準優勝1回、4強、8強進出がそれぞれ2回ずつと強さを見せ続け、2016年秋の明治神宮大会でも4強進出を果たしている。
チームを率いるのは2010年に就任したOBの八木啓伸監督だ。立命館大を卒業後に地元福岡県の西日本銀行(現・西日本シティ銀行)に就職したが、愛する母校の後輩たちを指導するために26歳の若さで退職。
銀行員という安定した職を捨て、アルバイトで寮監を、事務職員としてバスの運転手を担当。37歳でようやく教諭となった苦労人でもある。
また、福岡大大濠は地元民からの熱烈支持を受ける“愛され私学”の筆頭格として、毎年多くの有望な選手が入学する。八木監督は昨年のプロ野球日本一に貢献した浜地真澄(阪神)、西武の正捕手として活躍中の古賀悠斗(西武)、そして次代の球界を代表する大器として期待される山下舜平大(オリックス)らを育ててきた。
しかし、なかなか夏の聖地が遠い。今夏もドラフト上位候補の柴田獅子をはじめ、最速146㌔右腕の平川絢翔、三拍子揃った大型外野手の大神浩郎、堅守強打の内野手・高田大賀ら多くのプロ注目選手を揃えたが、決勝で西日本短大付(西短)に2-5で敗れている。
八木監督にとっては2017年夏に続く準優勝となった。優勝候補筆頭と目されながら、またしても跳ね返されてしまった夏の壁……。
すでに新チームは福岡地区新人戦で優勝と、秋季戦線に向けて順調にスタートを切っている。そんな状況の中で、指揮官は何を見つめ、何を思うのか。学校としては36年ぶり、そして自身初となる夏の甲子園出場を目指す八木監督に話を聞いた。