九ベ! ——九州ベースボール——

15年ぶりの頂点へ、取り戻した王者のメンタリティ━━JR九州・中野滋樹監督①

“あの景色”を見せるためにも、言うことは言う

━━監督1年目の昨年は、2大大会の出場を逃すなど結果が出ませんでした。今振り返った時に、チームや選手の雰囲気はどうだったのですか?
「最初の1年は、チームのことを把握しようと思って、じっくり観察することにしました。すると選手たちがゲームの中で一喜一憂が激しすぎると言いますか、行けると思えばドーンと行くし、ダメかなと思ったら途端にシュンと萎れてしまうことに気づいたのです。試合中に諦めてしまう場面が何度も見られましたし、厳しい練習を課した時もそれは一緒でした。選手たちも口では『一生懸命やっています』とか『日本一になります』と言ってはいますが、行動が伴っていなかったり、発言に重さがなかったです。そういったところを変えていこうと、2年目は生活面や仕事の面など、基本的なところから手を加えていきました。私たちが元監督の吉田博之さんから教えていただいた、人としてのあり方を伝えていきたいと思ったのです。 “目的に到達するためには、こんなことが必要だから、こういうことをしていこう”と自分で考えて動く選手が少なかったですよね。課題練習にしても、毎日同じ練習ばかりしているんです。『そうじゃないよね』という話からしていきました」

━━かつての常勝時代を主力として過ごされた中野監督だけに、当時のJR九州の中にあった「王者のメンタリティ」を肌で理解されているのだと思います。そのあたりを嚙み砕いて選手たちに伝えたのですか?
「私たちは『これだけやらないと勝てない』とか『こんなところでは負けられないんだ』とか、もっと言うと『負けたらヤバい』という環境でやってきました(笑)。ただ、当時の選手にはそういう中でも『なんとかしようぜ』という話をして、打開していくだけの力がありましたよね。選手みんなが自立していたからだと思います。ところが、今の選手たちはあの状況にいたわけではないので、同じように言っても伝わりません。“どうせ俺たちと監督やコーチは違うじゃん”と思われても嫌なので、当時のチームの環境や経験を例に挙げて話をすることはあまりないです。もちろん彼らには日本一になってもらいたいし、あの景色を何度も見てもらいたいと思っています。でも今の状況と日本一への距離感などを考えた時に、すぐに達成可能かというと、まだちょっと時間は必要だと思います。だけど、確実に良くなってきているのは確かです」

━━当時の強さの根底にあったものは何だったのでしょう?
「やはり“俺たちはこれだけの練習をしてきたんだ”、“どこよりも練習してきたんだ”という自信でしょうね。とにかく練習量が半端ではなかったので苦しかったですが、優勝した時は“やっぱり、やってきて良かったんだ”と心底思いました。それに、私が監督という立場に立ってみると、それだけの練習を選手に課すことはすごくパワーがいることだとわかったのです。ハードワークを課すということは、本当に監督やコーチが選手たちのことを思っていなければできませんからね。だからあの景色を見せてあげようと思ったら、言う時は言わなきゃダメだし、やらせる時はしっかりやらせないとダメなんです。そこがわかって、実践するようになってきたことが、今年になって大きく変わったところですね」

━━いつ頃から戦う集団に変貌していったと実感していますか?
「今年の都市対抗(予選)が終わったぐらいですかね。たしかに時間はかかりましたけど、やはり3季連続で全国を逃したという事実が、選手たちには一番響いたのだと思います。彼ら自身が“このままじゃ本当にマズいぞ”と思ったのでしょう。そのあたりから、私やコーチたちの言葉が、どんどん入っていくようになりました。そうやって、まとまっていった矢先の日本選手権予選だったので、タイミング的にも良かったですよね」

(つづく)

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