九ベ! ——九州ベースボール——

センバツ初勝利へ エナジックの隠し球は「闘牛スタイル」で真っ向勝負!

瀬良垣 壱瑠
せらがき・いちりゅう

 

最速141キロのパワーボールで押しまくる。スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォークを投げるが「小細工無用」とばかりにストレートで攻める攻撃的姿勢は、チーム内で「闘牛投法」と呼ばれている。168㌢、68キロと小柄だが、そんなピッチングスタイルの影響もあるのだろう。マウンド上で腕を振る瀬良垣は、実数値以上に大きく見える。

なぜ「闘牛投法」なのか。それは、瀬良垣の趣味が闘牛に他ならないからだ。沖縄本島の中でも闘牛が盛んなうるま市で生まれ育ち、祖父が闘牛を管理していたこともあって、子供の頃から闘牛は「生活の一部」だった。

物心が付いた時から、牛の身のまわりの世話を行ってきた。餌やりから散歩、ブラッシングはもちろん、怪我をした牛には薬を飲ませ、傷口に薬を塗り込んだこともある。そんな世話のすべてを担当しながら、実際に稽古も付けた。
「牛は練習場に行って他の牛と乱取りをさせても、ちゃんと試合ではないと理解しているんです。頭が良いんですよ」
と楽しそうに語る瞳が、らんらんと輝きを増してくるのだから、心の底から闘牛が好きなのだろう。

石川中時代には軟式野球部でプレーしながら先輩らと3人で闘牛を購入し、共同オーナーにもなった。また、牛のセコンドにあたる「勢子」として2頭を管理。試合中も牛のそばに寄り添い、懸命に牛の闘争心を駆り立てた。さらに、勉強のためにと闘牛の本場、鹿児島県の徳之島まで足を運んだこともあったそうだ。野球の実力を買われてエナジックスポーツに入学してからも、堂々と「将来は闘牛に関係する仕事に就きたい」と宣言していたという。

そんな瀬良垣も、昨春の優勝、夏の準優勝、そして秋の九州大会準優勝とチームが実績を積み重ねていくうちに、野球に対する欲が芽生え始めたようだ。
昨秋の公式戦登板は、わずか2試合にとどまった。一方、同じ左腕でエースの久高颯は、公式戦8試合で6勝と大車輪の活躍を演じている。その快投を目の当たりにするたびに、闘牛で培われた瀬良垣の闘争心に火が点かないわけがないのだ。

この冬は課題の制球力を高めようと、下半身強化に余念がない。しかし、1月中旬にチームの名物トレーニングでもある砂浜ランで、右足首をねん挫。全治3週間の怪我を負ってしまう。
それでも瀬良垣は前を向く。

「真っすぐは自信あります。他のピッチャーより、出どころが見にくいと言われているので、簡単には当てられないと思います。140㌔ちょっとでも、抑えられるところを見せつけたいです」

どんな劣勢からでも、正面からぶつかり合い、突進を続ける。そんな闘牛スタイルのピッチングで、瀬良垣壱瑠は甲子園を沸かせてくれるに違いない。

 

エナジックスポーツ 投手
168㌢、66㌔、左投左打

2007年12月27日、沖縄県うるま市生まれ
うるま市立石川中(軟式)
50m走:6秒8、遠投:101m
好きなプロ野球チーム:福岡ソフトバンク
好きなプロ野球選手:今宮健太(ソフトバンク)
尊敬する人物:大谷翔平(ドジャース)

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