九ベ! ——九州ベースボール——

小学生選手に伝える「楽しさ」と「本気」 大分県野球界のレベルアップはU-12世代の強化に原因があった!

今宮、源田、甲斐も通った入門カテゴリー

柳ヶ浦の選出で、大分県勢からは7年連続でセンバツ出場校が出ている。これは現在、九州地区では最長の記録だ。
そのうち2校同時での出場が2度あり、2021年には明豊が甲子園で準優勝を果たした。そして大分、大分商、大分舞鶴、そして今回の柳ヶ浦と、目下夏4連覇中の明豊以外の学校が出場校リストに名を連ねていることも、県全体の競技レベルの高さを証明していると言えるだろう。
大分県高校野球のレベルを上げているのは、もちろん明豊の存在が大きい。投・打・守ともに圧倒的なリードを築いている王者がいてこそ、他校は明確な目標を掲げて戦力強化に取り組むことができるのだから。

ただ、それだけではない。大分県は中学生カテゴリーのレベルが劇的に増しており、硬式ではシニアやボーイズの九州王者を争うチームが出てきている。軟式では明豊中が全国ファイナリストの常連に定着。大分県内の中学球界から甲子園やプロ野球選手を目指し、近畿や関東の強豪校に進学する選手も増えてきた。

しかし、そうした流れのルーツは小学生カテゴリーにある。
大分県は今宮健太(福岡ソフトバンク)、源田壮亮(埼玉西武)、甲斐拓也(巨人)、森下暢仁(広島)、梶原昂希(DeNA)ら侍ジャパンを経験した球界トップクラスの選手を多数輩出している。彼らを身近に感じながら、子供たちや指導者が野球に取り組む環境が揃っているのも大きい。
また、大分県には「大分Jr.ベースボール大分県選抜」というチームが存在する。そしてこの県選抜チームと市町村ごとに結成された選抜チームが一堂に会し、県ナンバーワンを決める大会もある。「U-12交流会 大分地区選抜大会」は、毎年2月に開催されており、今年が第9回目の開催。6年生にとっては学童最後の大会でもある。


全市参加の「なくてはならない大会」

今回、私は2月22、23日に行われた2025年大会を取材した。今年は県選抜3チーム(大分Jr.レッド、ブラック、ホワイト)に加え、県内全市の選抜チーム、福岡県から参加した北九州チームを含めた23チームが参加。初日は予選リーグ6組に分かれ、その上位チームが大会2日目の決勝トーナメントで対戦するというシステムだ。
その結果、今年の決勝戦はレッドとブラックの大分Jr.同士による戦いとなり、中盤の一発攻勢で12―3と圧勝した大分Jr.レッドが優勝。レッドの優勝は2023年以来2度目で、前身の大分Jr.時代を含めると5度目の戴冠となった。

決勝で12点を奪うなど圧倒的な強さで5度目の優勝を果たした大分Jr.ベースボール大分県選抜レッドの選手たち

 

準優勝に終わったものの、攻守にハイレベルな野球を展開した大分Jr.ベースボール大分県選抜ブラックの選手たち

この大会を取材し、あらためてピッチャーを中心とした、学童カテゴリーの甚だしいレベルアップを実感することができた。最速が120㌔前後を記録する中学生顔負けの体格を誇るピッチャーが、16mという小学生高学年規格から投げてくるのだから迫力はかなりのものがあった。しかし、そんなピッチャーの快速球を打ち返す打者も多く、中には逆方向のフェンス手前まで打球を飛ばすスラッガーも。たしかに飛距離の出る高性能バットの恩恵も否定できないが、体感130㌔以上のスピードボールに対応する小学生選手は、想像以上に多かった印象だ。

(残り 1383文字/全文: 2914文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ