九ベ! ——九州ベースボール——

超快投! 大阪桐蔭を8回途中までノーノー”に抑えた唐津商・木本夢翔 次戦で”シン四天王”と投げ合いか⁉

今年の佐賀県は、松延響(鳥栖工)、林龍之介(嬉野)、稲富理人(佐賀北)、藤瀬奎嵩(佐賀商)といった才能あふれる右腕の当たり年だ。
1年生だった23年夏の甲子園で144キロを記録し注目を集めた松延は「シン九州四天王」に名を連ね、球速もすでに147キロに到達。また、187㎝の長身から最速144キロ剛球を叩き込む林も、ドラフト候補として多くのスカウトのマークを受けている。
そんな近年稀にみる才能の大豊作が続く佐賀県で、1年時からトップグループを走り続ける好投手がいる。唐津商の木本夢翔だ。

1年秋の九州大会では昨年のU-18高校日本代表入りした興南の田崎颯士(亜大)と投げ合い、1-0で鮮やかな完封勝利を挙げている。
2年春には、九州大会で2勝を挙げ4強入りに貢献。準決勝では神村学園に延長10回サヨナラで敗れるも、昨夏甲子園4強の強打線を相手に9回まで1失点に抑えた。このように、舞台経験の豊富さと「ここぞの試合」で輝く勝負根性は、県内において唯一松延と肩を並べるレベルにあると言っていい。

しかも、ここへ来てさらに階段を上りつつある。
春の大阪遠征では、あの大阪桐蔭と対戦。全国屈指のタレントが揃う強力打線を、8回一死まで無安打と“あわやノーノー”に抑えているのだ。キレのあるスライダーを軸に9回1安打、無失点という超快投だった。
「気づいたら8回まで来ていた、という感じでした。じつはその1週前には西日本短大付(福岡)に自信のある真っすぐを打たれて6失点しているんです。そこで気づきました。いかに力感なく、コントロール良く投げることが大事なのかということに」
結果、1週間に前週とは別人のような変身を遂げてしまったのだから恐れ入る。
「とても成長できた7日間でした。1週間という短い時間で課題をクリアできたことが大きな自信になりました」

春の佐賀大会初戦で初めて球速が140キロに到達した。コースに伸びる130キロ台後半のストレート、打者先行のリズムを許さないハイテンポな投球術、球速差のあるスライダー、105キロのチェンジアップで作る緩急、そして野性味を感じるフィールディングのキレ……。これに加え、相手の名前に物おじしない度胸が木本には備わっている。むしろ、相手がデカければデカいほど、ポテンシャルが存分に発揮される投手だ。
それでも九州大会に出場した1年秋、2年春はいずれも県の決勝で敗れている。勝ちきれていない点は本人も自覚しているだけに、この春は是が非でも県優勝のタイトルが欲しい。

唐津商と木本は、順調に3回戦を突破した。準々決勝の相手は鳥栖工。ここでついに、木本と松延による投げ合いが実現するかもしれない。
「松延君ですか? まだまだ足元にも及びませんよ。でも、コントロールやゲームメイクでは負けていないかな」
大物食いは得意中の得意。今度の獲物は四天王の一角、九州を代表するビッグネームだ。

木本夢翔
(きもと・ゆめと)
唐津商 投手
177㌢、72㌔、右投左打
2007年6月14日、佐賀県唐津市生まれ
相知中では軟式野球部に所属し、2年秋に九州大会出場。最速140キロ(3年春初戦・対佐賀西)。球種はスライダー、チェンジアップ。50m走6秒7、遠投?、ベンチ/80㎏、スクワット140㎏。高校通算1本塁打。

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