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【講演会】学童全国Vの多賀・辻監督が長野で講演 「自分で考えられる人材を」

県野球協会北信地区野球協会主催
多賀少年野球クラブ(滋賀県)・辻正人監督講演会
(2月11日・ホテル国際21)

少年野球の多賀クラブを全日本学童大会と全国スポーツ少年団大会で計3度の優勝に導いた辻正人監督(56)が、「過去から学ぶ未来の野球指導」の演題で講演した。

↓ 聴講者の質問に応じる多賀クラブの辻監督

辻監督は20歳のときに同クラブを立ち上げ、ノーサインで全国制覇するなど先進的な野球指導で注目されている。部員140人のマンモスチームで、近隣県から通う選手がいるほか、遠方から引っ越して入部した家族もいるという。OBにNPB楽天・則本昂大。

学童や中学生、高校生の指導者、保護者ら北信内外から約110人が聴講。参加者からの質問に辻監督が応える形でチームの取り組みを紹介した。

主なやりとりは次の通り。
―選手140人に対し辻監督とコーチ5人でどうやりくりしているか
辻監督 全員が1日練習することはなく、午前8時から午後7時半ごろまでの間に、低学年は午前から2~3時間、6年生は5、6時間などと分けてやっている。部費は月2000円で、低学年は指導時間は短いが手がかかる分、スタッフ数を多くし、逆に6年生はスタッフを2人くらいで回している。学年別に監督を置くチームもあるが、チーム内に別のチーム感が出来てしまうので、多賀では学年隔てずに全員で教えている。練習時間が短くなったことでチームの人気が出てきた。人気の要因はあと付けです。

―1死三塁のケースなど座学で何をしているのか
辻監督 ノーサインの自分たちで考える野球はサインを見破られたから始めた。評判になったが、これもあと付け。座学は、グラウンドが使えないときに、45分~1時間程度行う。野球と、バレーボールやテニスなどのセット制の競技との違いも話す。スリーアウトのルールから無死一塁でも1打ずつでは得点にならない仕組みを話し、子どもたちに「それならどうする?」と問いかける。1死三塁にできたらどうしたらいいか。ここで120%の確率で点を取ることを前提にミーティングを進める。1死三塁をつくるまでに走塁が大事になることが分かる。座学では、チーム戦術を理解してもらうために親も後ろで聞いてもらっている。経験から、1年生は寝るが2年生は2~3割、3年生なれば全員分かる。

―短時間での練習のシステムは
辻監督 練習には投げる、捕る、打つ、走るの4つの要素は、比率はバラバラでも入れている。多賀では走塁が目立つ。今でも保護者の顔色を見ながら、保護者目線で指導している。

―打撃では体全体で遠くに飛ばすことを大事にしているが、辻監督が一番大事にしていることは
辻監督 ボールを飛ばすには、走り幅跳びのように打撃にも助走距離をつくることだが、ミートポイントのずれが生じてくる。ここの兼ね合いになる。

―多賀では選手に自由を与えているが、進路先が自由とは限らない
辻監督 卒団時に選手たちには「いろんな指導者がいるが、その人に好かれてください」と言っている。「多賀の野球を忘れないで」とも言っている。こんな野球が広がることを待つ。

―小学生から中学生へ、次のステップへアドバイスを
辻監督 少年野球は一番大事なところ。その小学生のときに、思い切り投げろ、打て、というのは体もできていない中で危険。小学生は頭を思い切り使ってと言っている。頭は使っても壊れない。小学生のうちの野球に対する考えをつけ、中学高校で体力やパワーをつければいい。

辻監督は最後に演題に絡めて、昔は家庭の役割が少年野球チームに託され、野球出身者が主に製造業で重宝された社会背景を説明。一方現代は「自分で判断して動ける人材を社会が求めている」とし、辻監督は「自分で考えられ、次の社会で求められる人材を育てていきたい」と語った。

辻監督は講演に先立ち、長野オリンピックスタジアム室内練習場で小さい子どもたちを対象にした野球教室でも講師を務め、投球や捕球動作を指導。学童の指導者約60人も見学した。

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