OKINAWA Island Hoops

【金城茂之の目】琉球ゴールデンキングス、レギュラーシーズンで「モヤモヤ」が続いた理由とCS・A東京戦の勝利のポイント 

 Bリーグの2023-24シーズンは全60試合を行うレギュラーシーズン(RS)を終え、琉球ゴールデンキングスは4119敗の西地区2位でRSを終えた。10日にはチャンピオンシップ(CS)が開幕し、キングス(全体5位)は同日から東地区2位のアルバルク東京(全体4位、A東京)と東京・有明コロシアムで2戦先勝方式のクオーターファイナルを行う。

 昨シーズンに初の王者となり、オフには千葉ジェッツ(千葉J)でエースだったヴィック・ローを補強。さらに今シーズン途中にはA東京で優勝経験を持つアレックス・カークが帰化し、2連覇に向けて盤石な体制を築いたかに見えたキングスだったが、白星を昨シーズンから7つ減らして西地区7連覇を逃した。もちろん貯金22は素晴らしい成績ではあるが、60試合の中でアップダウンが激しく、難しいシーズンとなっていることは間違いない。

 RSをどう総括し、CSではどのようなポイントが勝利の鍵となるのか。キングスの選手時代に背負った背番号「6」が永久欠番となり、現在は自ら立ち上げたバスケ塾「Try Error Retry」でコーチを務めたり、Bリーグの解説者をしたりして精力的に活動する金城茂之氏に独自の視点から語ってもらった。(取材・文・写真、長嶺真輝)

 ・RSでモヤモヤが続いた二つの要因

 ・リバウンドとDFでやるべきことは

 ・セカンドユニットが持つ重要な役割

 ・A東京で最も警戒すべき選手は「メインデル」

 ・キングスのキーマンに「田代と岸本」を挙げるワケ

RSでモヤモヤが続いた二つの要因

ーーーまずはレギュラーシーズンの振り返りからお願いします。

 「シーズンが始まった時はロー選手が入ったとこで『キングスがぶっちぎるんだろうな』と思っていましたが、期待以上に成績は伸びませんでした。そこには大きな要因が二つあると思っています。まずキングスはチャンピオンチームなので、全てのチームが練習の基準や選手獲得のラインを『どうやったらキングスに勝てるか』『どうすればキングスを相手に自分たちの強みを生かせるか』ということに重きを置いたと思います。全チームがスタンダードをキングスに合わせ、リーグ全体としてスカウティング力も上がってきている中で、かなり分析をされた。そこで昨シーズンのキングスを見た時に、誰がどう見ても乗せたらダメなチームだったので、どのチームも『いかにキングスを乗せないか』を考えたんだと思います」

ーーースカウティングをされたことに加え、二つ目の要因は何でしょうか?

 「この『いかに乗せないか』という部分につながってくるのですが、キングスが乗る要因は明らかで、これまでリバウンド王を3回取っているジャック・クーリー選手の存在なんです。キングスのオフェンスは最低限のルールはありますが、能力の高い選手が多いので、ある程度自由があり、何が起きるか分からないのが見ていておもしろいんです。結構タフショットも平気で打つし、それを決め切れる力もある。それが外れてもクーリー選手がリバウンドでつないでくれるから、いい流れができる。シュートも気持ち良く打てると思います。ただ今シーズンに関しては、これまでに比べるとクーリー選手のリバウンドの支配力が落ちています。それでもすごいのは間違いないのですが、これはおそらく、多くのチームのインサイド陣が彼に慣れてきたんだと思います。筋トレのようなもので、クーリー選手の重さにだんだん慣れてきて、彼の突拍子もないところからのフィジカルコンタクトに対する警戒レベルも上がっています。だから、以前のようには楽に取らせてもらえていない印象ですね」

ーーー今季のRSはチームとして厳しい状況が多かったです。終盤も4連敗を喫するなど苦しみました。

 「やっぱり3月にあった天皇杯決勝の千葉J戦は大きかったと思います。大差で負けたこと以上に、千葉Jにキングスのビッグマンを攻略されてしまったことが、その後の試合をより難しくしてしまいました。あの試合以降、ほぼ全ての対戦相手がクーリー選手やカーク選手のフットワークの鈍さを突いてきて、3BIGも少し使いづらくなってしまった印象です。この1カ月くらい、2人ともめちゃくちゃ頑張ってハンドラーに着いて行ってはいますが、バスケは習慣のスポーツなので、12カ月で動きが劇的に改善することは難しいです。クーリー選手のリバウンドの支配力の低下や足を狙われることなど、これまでチームにとって大きな武器だったインサイドで優位に立ちきれないことが、今シーズンのモヤモヤにつながっているのかなと思います」

ーーーロー選手も千葉Jの頃のような活躍はなかなか見せられていませんね。

 「ロー選手はシーズン序盤、個人技よりもディフェンスを引き付けてパスを散らす場面が多くて、良く言えばチームプレーに徹しているけど、消極的に見えてしまう場面もありました。それがシーズンが進むに連れ、今度は11で最後まで行ってタフショットを打ってしまうことが増え、難しいリズムになっている時もあります。今シーズンはEASL(東アジアスーパーリーグ)への参戦などもあり、スケジュール的にもなかなか満足にチーム練習をする時間が取れなかったとは思いますが、もう少しルールをつくったり、スペーシングを整理したいですね」

リバウンドとDFでやるべきことは

ーーーRSを踏まえた上で、いまキングスがやるべきことは何だと思いますか?

 「まずリバウンドに関して言えば、クーリー選手らインサイド陣だけじゃなく、もっと他の選手も飛び込めるといいかなと思います。これまでクーリー選手があまりにも強過ぎたので、少し見てしまう習慣が付いてしまっているかもしれませんが、これは意識を変えるだけでプレーも変わってくるので。例えば昨年12月のホームの信州戦で、最終盤に岸本選手が3Pを立て続けに決め、さらにオフェンスリバウンドを掴んで外に振り、松脇選手の3Pで追い付いて逆転勝ちした試合がありました。ああいうリバウンドを試合の序盤からやれるのが一番いいです。リバウンドは来ないと分かっていると相手は疲れないので、最初から積み重ねていくことが大事です」

ービッグマンの足を狙われているという話もありましたが、ディフェンスで必要な事は何でしょうか?

(残り 2717文字/全文: 5274文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ