津田大介のメディアの現場

vol.0_10 『MIAUからのお知らせ』(サンプル)

津田大介の「メディアの現場」2011.8.31(vol.0/創刊準備号)

僕が代表理事を務めるインターネットユーザー協会(MIAU)から、最新情報をお伝えします。

 


このコーナーではMIAUの活動の報告をメインに、インターネットにまつわる著作権や情報通信政策などの話題についてクリッピングしていきます。

さて今日の話題はこちら。

▼動画ダウンロード支援サイト「TUBEFIRE」運営会社に対して侵害行為の差止めなどを求める訴訟提起(日本レコード協会)→リンク

「TUBEFIRE」はYouTube上にある動画から、その音声のデータのみをmp3形式でダウンロードできるというサービスでした。同様のサービスとしてはYouTube向けだと「MP3TUBE」、ニコニコ動画向けだと「にこさうんど」や「nicomimi」があります。本メルマガのニュース解説コーナーで津田が解説している違法ダウンロードの刑罰化は、「情を知って(ファイルが違法なコンテンツであるということを知って)」ファイルをダウンロードしたユーザーを有罪にして実刑を与えようというものですが、この訴訟はあくまでもサービスを提供している事業者を訴えたものです。

レコード協会の主張はこうです。TUBEFIREは「TUBEFIREのサーバで」YouTubeの映像から音楽データを抜き出す処理を行い、 TUBEFIREのサーバ上に処理済みの音楽データを置き、それをユーザーにダウンロードさせていて、その行為は著作権法上で定められている公衆送信権(送信可能化権)や複製権を侵害しているというものです。データがTUBEFIREのサーバ上にあるのが問題だとしています。

一方、TUBEFIRE側はこれまで、映像データ含めコンテンツはユーザーのPCにあり、あくまでもTUBEFIREは、ユーザーのPC内のデータを処理するプログラム(Java Applet)をオンラインで提供しているだけだとしていました。

現在の著作権法ではストリーミングを視聴する際のキャッシュファイルの取得については、ダウンロードの対象外とされています。なのでTUBEFIRE側の説明どおりにサービスが実装されていれば、レコード協会の訴えは非常に難しいことになります。

YouTubeそのものや海外のサービスを訴えることは非常に難しいので、今回は足のつかみやすい国内企業を訴えたものだと思いますが、上述のとおり類似サービスや同様の機能を持つソフトウェアは国内国外問わず存在しますし、ブラウザのプラグインにすら同様の機能を持つものが数多くあります。トカゲの尻尾切りのように細々とした事象を潰すのではなく、YouTubeから音楽をダウンロードせずとも音楽を聴ける、豊富なカタログを揃えたサブスクリプションサービス(たとえば「Spotify」のような)の登場が待たれていると強く感じます。そういう意味ではNapster Japanのサービスが短命だったことは非常に残念です。

この件についての具体的なMIAUの動きは今のところありませんが、MIAUはそもそもダウンロード違法化に反対するところから生まれた団体です。今後も本件の動きを注視していく所存です。

—–参考:MIAU ダウンロード違法化反対の動き—-

私的録音録画小委員会の第15回会合に関する緊急メッセージ
(MIAU公式サイト)

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