クラウドファンディングを検証する 3-厄介な「レイシストカウンター」批判 8(松沢呉一) -2,556文字-
「クラウドファンディングを検証する 2-厄介な「レイシストカウンター」批判 7」の続きです。
なぜ「レイシストカウンター」は金が集まったのか
前回までをまとめると、あくまで「正当な手続きを経た映画である限り」という条件つきで、「レイシストカウンター」のクラウドファンディング自体は「金返せ」というようなものではない、ということになろうかと思います。
しかし、あれほどまでにひどい作品になってしまったことはクラウドファンディングのあり方にも一石を投じましょう(繰り返しますが、以下は「封印」が発表される前に聞いた内容です。正当な手続きの映画ではなかったことが確定したため、ここでの話にすでに該当しません。これについては、そのうち改めて検討します)。
—詳細がよくわからないアバウトなクラウドファンディングであっても、150万円近く集まったわけです。
「うらやましい。どうしたらそうなるのか教えて欲しい。どこに金を出す根拠があったのか探すと、テーマへの共感がまずあります。しかし、それだけであんなアバウトなクラウドファンディングにこんな金額が集まるとは思いにくい。推薦者や出演者の信頼があるからこそ金を出せる。例が悪いかもしれないですが、ジャニーズのタレントを主演に起用した映画の配給宣伝費をクラウドファンディングで集めるとしたら、監督が誰であろうと、使途がどうあろうと、収支報告があろうとなかろうと、金が集まりますよね。映画のクォリティに期待して金を出すわけではない点では同じです。だったら、クォリティが低いことをもって“金返せ”とは言えるはずがない」
—こういうテーマだと、メディアも味方になります。このクラウドファンディングもメディアが大きく取り上げたのが大きいのだと思われます。
例えば以下。
タダではおかしい場でもタダが通る
金を出した人たちはテーマの共感に加えて「何々さんが出ているから」「何々先生が推薦しているから」「何々新聞に出ていたから」ということで信用した。そこに名前を使われた人に責任があるのか否かは別途論じる必要があるとして、事実としてここまでは間違いなさそうです。
—この際、全部バラしますが、出演がノーギャラなのはいいとして、出演者が上映の際のゲストトークに出てもノーギャラです。ギャラが出ている人もいますが、格安です。
「えっ、どういうことですか? ドキュメンタリーでは出演者、つまり取材対象は原則ノーギャラです。菓子折りくらいはもっていくことがありますけど、金を出すことはまずない。金で得た言葉は信頼性を疑わせます。でも、上映の際のゲストは別ですよ。それで人を集めていて、その日の売上に貢献して、記事になったり、ゲストがSNSで告知もするわけですから、その場合は取材対象ではなく、宣伝協力という役割です。いわゆるお車代として、1万円程度は払うのが常識だと思います」
—だから常識は通じないと何度言ったら(笑)。たいして人の入らないイベントで、友だちの監督に協力する場合はご飯でもおごってくれればいいとして、私の経験でも、劇場での上映に際してのゲストはギャラをもらえます。5千円でも失礼だとは思わないけど、1万円が相場でしょう。
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