フランスの彩色技術—古い絵葉書[7]-[ビバノン循環湯 428] (松沢呉一)-2,115文字-
「水着の変遷と帯の謎—古い絵葉書[6]」の続きです。
正確に色を再現する気はない
たぶん石版印刷を重ねているのでしょうけど、「絵葉書の各種役割—古い絵葉書[4]」で見た色付きの災害写真はあまり美しくない。それより手彩色の方がずっときれいです。
プリントに彩色されたものの場合は、撮った写真家が彩色することもあったかと思いますが、絵葉書は専門の職人がやってましたから、元の色なんてわかりません。写真を見てきれいな色を適当につけます。
以下は彩色が下手で、色にムラがあります。買った人が彩色したんじゃないかとも思うのですけど、同じ写真で色が違うことがよくわかりましょう。
したがって、実際の色がなんだったのかを手彩色の写真から遡ることは不可能ですが、きれいだったらそれでいい。この頃の絵葉書はグラビアの代用をしていたと言えます。記録より美しさ優先。
当然当時も、現在の市場でも、手彩色ものは高い。モノクロの数倍します。その分手間がかかっているので当然です。数も少ないのです。
ところが、フランスのポストカードは彩色率が高いのですよ。彩色されたものだから今まで保存されてきた可能性もあるのですが、だったら日本だって同じです。フランスでは早くからコレクターが確立されていた可能性もありますが、フランスの彩色ものは使用済みも多い。実用性のあるものだったわけです。
数が多いので、フランスものの美麗ポストカードだったら、神田にでも行けば数百円から買えます。彩色がきれいなものや凝ったものになるとまた別価格ですが、一世紀も前のものがそんな値段。
フレンチポストカードはエロ
拙著『エロスの原風景』ではもっぱら狭義のフレンチポストカードを取り上げてます。ヌードなど、エロチックなものです。これがまた高いんだ。
広義のフレンチポストカードは、そのまんまフランスのポストカードを指し、時期は19世紀末から20世紀初頭です。乳首が見えなくても、フランスもののポストカードはホントにきれい。しかもシャレています。さっき家の中で発掘された箱の中からいくつか出しておきましょう。
まずカップルもの。
男の顔が面白い。テクノカット。顔をくっきりさせるために男も口に何か塗っているようです。
チューしてはります。フランスものではよくあるのですが、これはストーリーものの1枚です。男と女が出会って、男が花束をもってプロポーズして、二人が見つめ合って、最後にチュー。エロ系フレンチポストカードでは、そのあとセックスするものもあります。私は持ってないですけど、どっかの本に出てました。そうなると、さすがにフランスでも非合法です。
これはPinterestから。舌がからまってましょう。フランスだけにフレンチキス。
子ども絵葉書と背景
続いては子ども。フレンチポストカードでは子どもも人気。全然エロじゃなくて、ただかわいいだけですけど、ペドフィリアだと通報するのが出てきかねないので、以下は購読者のみ。
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