数字がぶれやすい条件—受験者の女子率・合格者の女子率[下]-(松沢呉一)-3,313文字-
「東大医学部の女子率を高めるには理系女子を増やす以外に方法はない—受験者の女子率・合格者の女子率[上]」の続きです。
医師国家試験では女子の合格率が高い
医師国家試験の男女の合格比率を見てみました。
医師国家試験予備校テコム「第112回医師国家試験合格状況」より
つねに女子の方が2パーセントから3パーセント程度合格率が高い。例年このパーセンテージで女子が高いってことは意味がありそう。
この場合は同じ条件で大学に入り(ってところに疑惑があるわけですが)、同じ条件で授業を受けて、同じ条件で国家試験を受けているわけで、にもかかわらず、女子の方が合格率が高いってことは、普通に考えれば「大学でも女子の方が真面目に勉強した」ということになりそうです。
男子医大生は、小学生と同じで、学外でも「注射ごっこ」とか「解剖ごっこ」に忙しくて、勉強をしないのがいますから。
医大にとって、国家試験の合格率は大学の実力を示す指標になるので、私立の医大では、合格しそうにない学生は留年させて国家試験を受けさせず、合格率をキープするんじゃなかったでしたっけ。偏差値が低い大学でも国家試験合格率が高いのはそのせいだったような(こちらにその話が出てます)。
落ちこぼれるのはたいてい男子かと思いますが、それをはずしてもなお女子率が高いのだとすると、相当までに「女子の方が真面目で成績がいい」ってことですけど、「大学入学の時点で頭の出来が同じではなかった」という可能性も浮上します。
司法試験の場合
医師国家試験ほどではないですが、司法試験合格率も女子の方がわずかに高いようです。
公益財団法人せんだい男女共同参画財団「司法試験の受験者、合格者の女性比率(全国)」
ただ、逆転している年もあるし、男女差は医師国家試験ほどではないので、ここでは差がないと見た方がいいのかもしれない。
上智大学と明治大学の数字を見る
だったら、医大以外の大学はどうなのだろうと思ったのですが、合格者の男女数は出ていても、受験生の男女数まで公表している大学は少ない。医大に見合うくらいには偏差値が高く、人数も多い大学を片っ端から見ていたら、上智大学と明治大学が公開してました。
上智大学「2018年度 入学試験データ」
こまけえなあ。数字は好きですけど、老眼なので、この表は苦手。
明治大学「2018年度 一般選抜入学試験結果」
明治大学も老眼に厳しいです。
どっちも全学部を計算しました。上智大は8学部あって、文学部のみ受験者の女子率より合格者の女子率が低く、7学部で合格率の方が高い。全体では受験者の女子率は42.5パーセントだったのが合格率では44.6パーセントで、2.1パーセント高い。
これは意味があるかもしれないと思ったのですが、明治大学は微妙。10学部のうち7学部で女子の合格率が高いのですが、全学部トータルの受験者での女子率は33.1パーセント、合格者での女子率は32.8パーセントで、0.3低くなっているのです。
学部数では女子が押さえているのに、トータルの数字で逆になっているのは、学生数がもっとも多い理工学部、次に多い商学部で女子の合格率が低くなっているのと、受験者の女子率より合格者の女子率が上がっている学部には定員が少ないのが混じっているためです。
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