日仏の色の違い—古い絵葉書[8]-[ビバノン循環湯 429] (松沢呉一)-2,243文字-
「フランスの彩色技術—古い絵葉書[7]」の続きです。
日本の色、フランスの色
ここまで見てきたように、日本とフランスの古い手彩色絵葉書を見ると、色の付け方や工夫の多様性はフランスには勝てません。フランスは洋画的、日本は日本画的に発展したのであって、どちらが上とは言えないという意見もありましょうが、ともあれ違うのです。
以下はこのサイトで見つけたもの。
この色味は日本的。娼妓っぽいのですけど、「NECTARINE No 9」とあります。横浜のチャプ屋系統の外国人専門娼家かもしれないと思って、「NECTARINE No 9」で検索したところ、Pinterestに以下がありました。
やはりYokohamaとあります。髪を結っていないのがいますね。大正期のモダン芸者になると洋髪も出てきますが、遊廓ではその時代でも日本髪だったでしょう。外人向けだからかもしれない。
これは写真があまりに鮮明なことから、絵葉書ではなく、生写真に着色したもではなかろううか。絵葉書には生写真をそのまま使ったものがありますから、生写真かつ絵葉書というのもあるんですけどね。
上と見比べると、彩色もはっきりしています。おそらくなのですが、下はフランスで彩色したものでしょう。
日本の手彩色では白以外の顔色をつけない
前々回書いたように、今現在ネットで公開されている、驚くほど美麗な彩色絵葉書の元ネタは、たいてい石黒コレクションじゃないかと思えます。もしそうだとすると、それらの絵葉書がきれいなのは、日本の技術じゃなく、フランスの技術である可能性が高い。
石黒コレクションは石黒敬七が大正時代にパリに滞在して、蚤の市で買い漁ったものが中心です。日本からあちらに郵送されたり、土産で持ち帰られたものだったわけです。彩色されたものが輸出されただけでなく、パリで彩色されたものがありそうです。
パッと見で、日本の彩色はフランスのものに比して地味です。色が淡い。
きれいな彩色ですけど、顔に色がないですね。ばあちゃんだから、鮮やかな肌色をしているのも変ですけど。
キリッとした美人さんです。デートしたい。しかし、若いのに顔に色がありません。肺病かもしれません。
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