通天閣の脇で聞いた「モンゴル相撲の力士とヤッた話」-[ビバノン循環湯 481] (松沢呉一)-3,448文字-
15年くらい前にメルマガに書いたもの。
許可をもらって書いた原稿ではないので、原文には店名も名前も入っておらず。店名はともかく、名前があった方が人の輪郭がくっきりするので、「エミちゃん」(適当な名前)にしておきました。
「ホモ」「おかま」が連発しますが、これについては「心の内務省を抑えろ」シリーズをお読み下さい。
図版はGoogleストリートビューより。
新世界のおかまバー
大阪のゲイタウンと言えば堂山である。しかし、もとはと言えば新世界や天王寺公園がよく知られている。
堂山が新宿二丁目で、新世界が浅草、天王寺が上野といったところ。上野公園がそうであるように、天王寺公園は男娼を含む街娼のメッカであり、ホモのハッテン場でもある。
労働者の町である西成には、男同士で住んでいる人もけっこういて、ニッカポッカをはいて大っぴらに手をつないで歩いている中年男性と若い男のカップルもいるそうだ。目撃者によると、若い方は福岡翼に似ているとのこと。
新世界にもゲイサウナやハッテン場になっている映画館があり、通天閣の北側には古くからのゲイバーが密集する路地がある。このゲイバーは短髪ガチムチのママがいるゲイバーではなく、昔のゲイバーだ。ゲイボーイのバーであり、一般にはオカマバーと呼ばれる。ニューハーフと呼ばれるような若い美女たちがいて、きらびやかなショーをやっているような店じゃなく、ホステスさんたちは如何にも新世界がよく似合う中高年層だ。ゲイボーイだけれども、もはやボーイという年齢ではない。
かつては男娼もこの周辺には多かったらしいのだが、現在はほとんど消えてしまって、私はまだ会えたことがない。それらしき人たちは立っているのだが、彼女らは客引きのために外に出ているゲイバーの人たちである。
その一角に、昨年から何度か行っている老舗のゲイバーがあって、すっかり顔なじみとなっている。
あんた、ヘンタイやないの?
この一月にも立ち寄ったのだが、「売春夫宣言をして、今度ウリ専をやるかもしれない」という話をしたら(注)、「なによ、あんた。アタシたちには、その気がないって言っておきながら、ホントはホモなんやないの。素直に言いなさいよ」とエミちゃんにカムアウトを迫られた。
この人も、たぶん五十代。
「いやー、そういうわけじゃないんだな、これが」
「そういうわけじゃないのに、どうしてウリができんのよ」
「オレはノンケ食い向けのウリ専で、しかもケツに入れられるのはいいけど、入れるのはできないネコだからね」
「あら、あんた、そこまでやるの」
「だって、そこまでやらないと、商売にならんべさ。ゴムをつけてくれたらフェラくらいはやるけど、タチはできないマグロだからさ。何のテクもないし。だから一時間五千円しかとらない」
「大丈夫よ、私がしゃぶって、意地でも立たせてあげるわよ」
エミちゃんはズボンの上から私のチンコを揉み出した。
「無理無理。今日も、ここに来る前に、飛田新地で一発やってきたんだよ」
私がそう言ったら、エミちゃんはチンコから慌てて手を離し、私の体を叩く。
「あら、フケツ。どうも臭いと思ったら、女の臭いだったのね。女とやったあとでここに来たらあかんて。今度からは、この店に寄ったあとで、飛田に行きなさい」
「でも、馴染みのコは早番だからさ」
「飛田に馴染みなんておるの」
仲居さんにもすっかり顔を覚えてもらって、飛田新地はもはや庭同然である。
「東京の人間なのに、ホンマにこの辺に詳しいわね」
大国町から新世界を経て天王寺までのミナミのエロ・ラインはだいたい把握できている。最初はアクが強すぎて、頭がクラクラしたものだが、今は「老後はこの周辺に住んでもいいな」と思えるようになってきた。
「あんた、女とやって、ウリもやるんやったら、バイじゃないの。素直に言いなさいって」
エミちゃんはなおも追及してくる。
「まあ、ホモでも、バイでも、なんでもいいけど、ナメるんだったら、チンコよりはマンコの方がいいな、オレは」
「いやね、もう。あんな気持ちの悪いものをよくなめられるわよ。ヘンタイやないの?」
「あんたに言われたくないけどさ」
「まあ、そりゃそうよね」
注:この頃、こういう宣言をしていた。一時間五千円というリーズナブルな料金だったのだが、女子からの申込があっただけだった。その女子はすっぽかしやがったので、客はつかず。
※その一角はストリートビューでは入れないようで、通天閣を下から見たところ。すぐ前までストリートビューが入れるハッテン場もあるのだけれど、迷惑がかかってはいけないのでやめておいた。
陰毛を刻んで飲むマニア
エミちゃんはゲイ雑誌「バディ」も読んでいるのだが、最近出ていたフィストファックの写真がショックだったらしい。
「お尻はウンコするところよ。気持ち悪いわあ。なんであんなことをするのよ。ウンチが垂れ流しになるんやないの?」
「そんなことはないよ。時間をかけて広げれば大丈夫。それに、自分だって、ウンコするところにチンコ入れられたりしているくせに」
「それもそうよね」
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