ベルギーの数値が示唆する介護領域の感染と死亡—ベルギーで異常に多い死亡者が出た理由[2]-(松沢呉一)
「ブラック・ライヴズ・マターから見えるヨーロッパの現実—ベルギーで異常に多い死亡者が出た理由[1]」の続きです。
ベルギーの死亡者があまりに多い理由
ブラック・ライヴズ・マターでヨーロッパの街が荒れていたことを知ったのは、「問題は夜の街よりも老人施設—マスクよりもフェイスシールド[7]」でも触れたベルギーのCOVID-19事情を調べたのがきっかけです。
ベルギーの死亡者数がヨーロッパでは飛び抜けて多く、人口当たりではスペインやイタリア以上であることの理由を知りたくなったのです。
改めて数字を見てみましょう。
感染者。
続いて死亡者。
2020年7月18日付「worldometers」
6月18日現在感染者数63,499名、死亡者数9,800名。致死率15.5パーセント。ナニ?この高さ。死に過ぎです。
今現在、万単位の感染者が出ている国で、致死率が10パーセントを超えているのは、イタリア、メキシコ、イギリス、フランスなどで、多くの場合、病院や介護施設で一気に「死にやすい層」に感染が拡大した国々だと思われます。
その中でもベルギーは致死率が高くて、一定数以上の感染者が出た国に限れば世界第2位かもしれない。1位はフランスで17.0パーセント。3位はイギリスで15.4パーセント。
ベルギーの特殊な死者数のカウント
なぜこうもベルギーでは死亡者が多いのかというと、カウント方法が特殊だからです。ベルギーでは、検査をしていなくても、疑わしい死亡者をカウントしています。
死亡者のうち、46パーセントが病院で亡くなり、53パーセントが介護施設で亡くなっています。病院の場合は検査をしていますが、介護施設では原則検査はなされておらず、介護施設で亡くなった人のうち、5パーセントのみが検査の結果陽性であったことがわかっていて、残りの95パーセントは推定数です。超過死亡がある程度カウントされているわけです。
通常のカウント方法であれば、ざっと全体の半数ということになります。現状、死亡者は9,795名ですから、そのうち陽性が確認されているのは5千名程度でしょう。スウェーデンより少し少ないくらい。感染者数は63,000名で、スウェーデンは76,000名ですから、おおよそ計算が合います。
どっちにしても死亡者が多いのですが、こちらの数字で計算すると致死率は10パーセントを切ります。
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