今年のノーベル物理学賞は重要、平和賞もまた重要—マリア・レッサとドミトリー・ムラトフ-(松沢呉一)
気候変動が争点に
真鍋淑郎さんら、気象学者たちがノーベル物理学賞を受賞したのは画期的で、ノーベル賞委員会としても、人類滅亡が現実になりかねない危機感を抱いていることの表れでありましょう。「そこまで事態が進んでいる」ってことをここから受け取るべきだと思いました。
10月に入ってからでも、イタリア各地で連続豪雨です。
https://www.youtube.com/watch?v=_2YtS1PSE1Q
ヨーロッパにおける気候変動は、今年、決定的になったと言えます。
しかし、ヨーロッパだけでなく、オマーンとイランを襲ったサイクロン・シャヒーンも被害甚大。
アラビア半島で雨がいっぱい降ると、砂漠が緑化されるんじゃないかと思ったりしますが、そう都合よくはいかないですわね。
どっちも観測史上初の事態で、とくにサイクロンがオマーン到達したのがこれが初とのことです。
これ以外にもインドネシア、メキシコ、米アラバマなどで洪水が起きています。
ヨーロッパに比べると、日本ではさほど危機感が強くないようにも感じますが、北海道でのウニとサケの壊滅と並んで、真鍋淑郎さんのノーベル賞受賞がいいきっかけになるかもしれない。潜在的には危機感が溜まっているので、きっかけがあれば表面化するはず。
先日、路上でポスターを見て気がついたのですが、共産党もやる気です。今後、選挙の争点になっていくことは間違いないので、早くに着手したのは賢明でした。
「2030戦略」で共産党が言っているように、人類が滅びないで済む体制作りは社会制度を根本から変える話なので、そう簡単ではないと思いますけど、真鍋淑郎さんのノーベル賞受賞がその困難さをわずかながらにではあれ軽減したかもしれない。
ここまで書いてきたように、私はもうティッピングポイントを越えているので、これから何をしても間に合わないだろうとも思っていますけど、「あの時にやっておけば間に合ったかもしれない」と思うのは悔しいので、やるだけやった方がいいんじゃないですかね。
ノーベル平和賞はマリア・レッサとドミトリー・ムラトフ
私は物理学賞よりもノーベル平和賞に注目してました。候補者のすべては公開されていないのですが、ざっと見たところ、ロシアで投獄されているアレクセイ・ナワルニーや国境なき記者団、香港の民主化メディア「HKFP(Hong Kong Free Press)」などが入っていて、できることなら「HKFP」が受賞して欲しいと思ってました。
香港メディアとしては「立場新聞」や「アップルデイリー」を私は愛用してきましたが、これらは商業メディアである点でノーベル平和賞を授与するにはちょっとひっかかりが生じそうで、非営利団体である「HKFP」が候補になったのだろうと思われます。
「HKFP」が受賞したところで、中国政府は「内政干渉だ」と批判して終わるだけで、香港の民主化勢力に対する弾圧をとめることはないでしょうが、香港の民主化運動をあっという間にネタとして消費してしまって、香港メディアを潰すべく「武漢ウイルス研究所から漏れたなんて主張は陰謀論だ」「武漢肺炎といった用語は差別だ」と中国共産党の手下と化した人たちの恥知らずな厚顔さを明らかにするくらいの意味はあるでしょう。
さて、ノーベル平和賞発表の昨日10月8日、受賞したのは2名いて、1人はマリア・レッサでした。フィリピン人初のノーベル賞受賞です。彼女は「ラプラー(Rappler)」創立者であり、代表者です。
ラプラーとマリア・レッサについては「マスクをしない人に暴行を加えるフィリピン自警団とNY警察—マスク・ファシズム[6]」を参照のこと。「ビバノン」ではしっかりフォローしておりました。
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