松沢呉一のビバノン・ライフ

たばこ税の高さは不当—禁煙半月の今こそタバコを擁護したい-(松沢呉一)

 

禁煙のせいでダメ人間になりました

 

vivanon_sentenceここ数ヶ月、「ビバノン」は、1日2本更新することが多かったわけですが、10月に入ってペースが落ちていて、更新なしも増加中です。今後もそうなりそう。

これはタバコをやめたせいです。昨日で禁煙2週間を達成しましたが、10日目を過ぎたあたりから、何に関してもやる気がなくなってしまっています。禁煙をすると、頭が真っ白になって、思考能力が落ちることがありますが、それは禁煙を始めた直後に起きる現象であり、禁断症状のひとつと言っていいでしょう。

今現在の私のやる気のなさはそれとは別で、もっと「ダルい感じ」で、集中力が持続しません。

タバコは集中力を持続させる効力があるとしか思えない。私の主観でしかないですが、おそらく私と同じような感触を得ている人がいると思います。あとは気分転換効果。「この辺で一服して、次の1時間につなげる」といった効能です。

禁煙した人たちはその意思が揺らぐので、タバコの効果を実感してもそれについては表明せず、あるいはそれ以前にいい点を見ず、悪い点ばかりを見て「やめてよかった」と思いたがる傾向が強いと思いますが、私は何事も公平に見ようとする主義ですから、いい面も見据えたい。

公平に見るために悪い点も挙げておきますが、体に悪いとか、ヤニで汚れるとか、ニオイがつくとかは言うまでもなく、とくにパイプは火のついた葉が落ちることがよくあって、いろんなもんに穴が空きます。Tシャツとかズボンとかパンツとか(パンツ一枚でパイプを吸うなってことですが)。

しかし、それらを越えるだけのメリットがあると考える人がいたっていいじゃないですか。これだけ公共空間での喫煙が禁じられ、路上喫煙も条例で禁じられ、分煙が進んでいるのに、屋外の喫煙所までが撤去され、理不尽な値上げも続いています。喫煙者は怒っていいし、すでに喫煙者ではない私も怒ってます。

 

 

上落合「梅の湯」が廃業

 

vivanon_sentence話は変わって9月2日の夕方、急に思い立って上落合の梅の湯に行きました。西武新宿線の下落合と中井のどちらからでも5、6分。地下鉄東西線の落合からでも5、6分。決して便利な場所ではなく、わざわざ行くほどの特徴もない銭湯ですが、なんの変哲もない「普通の銭湯」にフラリと行きたくなることがあるってもんです。

あ。

 

・この度長らく休業させていただいておりますが、9月末日付で当店を閉店させていただきます事をご報告いたします。

・先代が大正14年創業しましてから、地域の方々にご愛顧いただき誠にありがとうございました。

 

もうちょっとで創業100年だったのに。

急に梅の湯に行きたくなったのは、虫の知らせと言いますか、何か勘が働いたのかもしれない。すでに遅かったわけですが、その前から休業していて、そのまま廃業を決定したようなので、9月末でももう入れなかったのかとも思います。

新宿区の銭湯がまたひとつ減りました。

それでもまだこの周辺には銭湯がボチボチあるので、この日は上落合の松の湯に行きました。

松の湯はわりと好きな銭湯で、時々行くのですけど、ここは浴槽が立体構造になっているのが特徴です。その最下層にある薬湯に入りながら考えていたこと。

その時の薬湯は、生の葉を入れたアロマ湯だったのですが、甘草(かんぞう)、川芎(せんきゅう)、陳皮(ちんぴ)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)といった漢方の薬草を使った入浴剤を使っていることもよくあります。

陳皮はミカンの皮ですから、ビタミンが皮膚に直接作用することもあるかもしれないですが、皮膚から成分が吸収されることはあまりないので、入浴剤が内臓系の疾患にまで効くなんてことはまず期待できない。ミカンの皮をそのまま湯に入れるならともかく、入浴剤になっていたらほとんどビタミンは残っていないでしょうし。

口や鼻からわずかな成分が体内に入ってきて、効果を発する可能性もありますが、そういった物理作用がなくとも、薬湯の香りは落ち着きます。とくに生の葉っぱを使っている場合。

錯覚でもいいじゃないですか。気分がよくなれば。タバコも一緒。

 

 

next_vivanon

(残り 1042文字/全文: 2762文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ