借金漬けにされた発展途上国—中国の「一帯一路」構想は植民地支配に他ならない-(松沢呉一)
「中国人によるケニア人へのムチ打ちはまだマシな方かも—中国がケニアに建設した鉄道(The SGR)でのおぞましい差別待遇」の続きです。
報告書が明らかにする中国の手口
これまでたびたび書いてきたように、中国は発展途上国を借金漬けにしています。
このところ、連続してこれについての報告書が出ています。
以下は、バージニア州にあるウィリアム・アンド・メアリー大学内の国際開発研究チームAidDataによる中国の開発資金提供に関する報告書を映像にしたもの。
ざっくりとした内容はこちらに出ています。サムネイルに使っている図版の¥マークは日本円ではなく、人民元のマークです。同じです。
中国の開発援助の内訳は31対1。負債になる借金が31、返済不要の助成金は1。そのほとんどは借金なのです。
この融資は通常は表に出にくく、この「隠された債務」の60パーセントはこの調査が初めて明らかにしたってことらしい。
その結果、発展途上国の債務は3850億ドルに達していて、対中債務が国内総生産(GDP)の10%を超える国は42カ国にのぼることが明らかになってます。
返済できなければ、その担保である鉄道や橋、高速道路を没収して、利益をもっていく。それでも返済できなければ土地を押収する。悪徳金融がそうであるように、むしろ返済できない方がよく、その状態で、政府を言いなりにするのがベスト。
国際機関が決議をしようとしても、中国に不利になることはそれらの国が反対に回ります。
もちろん、借金する側はそれが借金であることはわかっているわけですが、鉄道にせよ、橋にせよ、高速道路にせよ、政治家たちとしては自身の功績としてわかりやすくアピールできる方法です。そのツケはのちのち国民にのしかかってくることなんざ説明しなければいいだけ。
返済不要の援助は民主主義が条件とされます。とくにヨーロッパ各国の援助の場合。憲法を改正して独裁体制を強めたり、反対派の弾圧をやったりすると援助が打ち切られます。その点、中国からの借金はそんな面倒なことは言わない。むしろ独裁体制を進めて欲しがる。中国政府と独裁政権の間ではウィンウィン。国民はサルでしかないのでどうでもいい。これが中国の官民一体化したやり方。
※2019年10月19日付「statista」 2017年のGDPと比較した対中国債務を表す世界地図。アフリカとラテンアメリカの全体、アジアの一部は相当にまずい状況にあります。この段階では正確な数字は出ていなかったため、実際にはもっと危機的。
膨らむ債務
中国としては貸せば貸すほど有利であり、自分らの言いなりの国を増やせるため、「援助」をしまくっていて、どんどん各国の債務が膨らんでいます。
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