無許可で久石譲コンサートを年に100本開催してボロ儲けの韓国—文化盗用とパクリ[15]-(松沢呉一)
「自己実現のために「差別」「文化盗用」を利用する人々—文化盗用とパクリ[14]」の続きです。
無許可の「久石譲コンサート」が横行する韓国
このシリーズは「文化盗用とパクリ」がテーマですが、今回はどっちでもないような、あるような。
2024年5月23日付「FNNプライムオンライン」
韓国各地で、複数の主催による「久石譲コンサート」が開かれており、高額なものでは日本円で14,000円。タイトルには「HISAISHI JO」と書かれていて、長らく続けられている久石譲指揮によるコンサートが韓国でも行われるのだと勘違いする人もいるでしょう。
ところが、久石譲に無許可で行われているとのこと。正規で招聘しようとした会社もあったのですが、断られたそうで、無断で自分のコンサートを平然とやっている国に行きたがらないのは当然という意見も韓国では出ています。
つい最近先進国になった韓国でも、これは違法の可能性が高い。
文化芸術が専門のペク・セヒ弁護士(DKLパートナーズ法律事務所)は、著作権の中でも「著作物を編曲して変更を加えるかを決定できる『同一性維持権』や、公演の際、例えば『久石譲』という名前を表示できる権利である『姓名表示権』は、著作権者本人の許可が必要だ」とした。
その上で、許可を得ていない状態でのコンサート開催は「著作権法違反の可能性がある」と指摘した。
「同一性維持権」は日本の「同一性保持権」、「姓名表示権」は「氏名表示権」です。韓国の著作権法を見ても、大きな違いはありません。だとすると、コンサート全体のタイトルに名前を無断で使用するのは姓名表示権の侵害ではなく、パブリシティ権の侵害ではないかと思います。いずれにせよ、この2点はクリアされていないようです。
それ以前に、「勝手にコンサートで曲をカバーしていいのか」という問題がありますが、韓国メディアで主催のひとつは事後に使用料を払っている旨を語っているので、主催と著作権管理団体の間で包括契約していそうです。日本でもだいたいそうなってます。しかし、著作権管理団体が委託されて管理できるのは財産権だけなので、人格権である上の2点は関係がなく、それとは別に許可が必要です。
また、韓国メディアの取材を拒否した主催もあるので、何かやましいことをしてそうです。コンサートの包括契約は用紙に曲タイトルなどを書き込むだけなので(今はオンラインでできるのか)、インチキしようと思えばできます。それでも通常は、作曲家や作詞家の利益になるものなので(きれいに本人に入るわけではないですが)、正直に申請しますけど、無許可コンサートをするような会社は信用できんでしょ。ここは韓国音楽著作権協会がしっかり調べて欲しい。
「Kカルチャー」は世界的に注目される文化アイコン?
久石譲の事務所による声明には「許可なく久石の楽曲を編曲し利用する催しが世界各地で多数行われています」とあって、韓国を名指していませんが、複数の主催が久石譲名前を冠したコンサートをやっている国が韓国以外にあるとしたら中国くらいか。知財に対する軽視ぶりは似たり寄ったり。
この声明は、4月26日付で発表されており、5月に入って韓国のメディアがこの件を取り上げて、大きな話題になりました。そのひとつが上に出した記事が引用している5月9日付「Eデイリー」。
引用しているのは「Eデイリー」のまとめ部分。
「Kカルチャー」は世界的に注目される文化アイコンだ。問題は著作権に対する国内認識は国際的なレベルに追いついていないことだ。「久石譲コンサート」はすぐ目の前の収益に盲目になる後進国型行動だ。韓国文化界は本質に気づくべきである。
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