松沢呉一のビバノン・ライフ

「アサクリ シャドウズ」はエロゲーにして出せばいい—文化盗用とパクリ[18]-(松沢呉一)

韓国系米人編集者マット・キムのこっ恥ずかしい「アサクリ シャドウズ」擁護論—文化盗用とパクリ[17]」の続きです。

 

 

韓国国内での報道

 

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前回取り上げた韓国系米人編集者マット・キム氏のような考えが韓国では標準だったら怖い。そんなことはないだろうと思いつつ、念のために調べてみました。

当然韓国国内でも、「アサシン クリード シャドウズ」騒動については取り上げられていて、私が見た範囲では、呆れる内容は見当たりませんでした。ホッとしました。ただし、ゲーム内容をそのまま紹介する宣伝メディアでは、史実通りを強調するような記述が散見できます。宣伝資料にそう書かれているのかもしれない。

掲示板や個人ブログまでチェックすると、マット・キム氏の同類はいるでしょうが、プロの編集者があれを書いたのは大失策です。マット・キム氏の愚劣さは彼個人のものでしょうが、ここまで書いてきたように、国外に出ているがゆえに時代遅れの偏狭なナショナリズムを温存し、さらには熟成することはしばしなあることです。

日本の敗戦を受け入れられなかったブラジルの「勝ち組」が顕著な例です。信じたいなら一生信じるのもありでしょうが、「勝ち組」は敗戦を受け入れた「負け組」を敵視し、やがてはテロ集団と化して、「負け組」の幹部たちを襲撃します。結果、複数の死者が出て、ブラジルでは日本人移民を禁止にする措置が取られそうにもなります。偏狭なナショナリズムが同胞の命を奪い、日本人移民全体のイメージを落としました。

そこまでの話ではないにしても、マット・キム氏は事実の重要性を放棄して、いじましい個人のアイデンティティを肥大させ、「オレは韓国系アメリカ人だあ」と大声で叫びながらあんな文章を出したら、韓国人イメージに傷をつけそうです。

ま、知ったことではないですが、マット・キム氏や中国系団体「Stand Against Yellow Face」のように、それぞれの愛国心に基づいて、気に食わない他文化を潰す武器として「多様性」だの「文化盗用」だの「差別」だのといった用語を利用するのがいることに警戒した方がよさそうです。

✳︎2024年5月22日付「THIS IS GAME」  韓国のゲームメディア。書き手が「私」を出すことなく、問題を整理しています。メーカーに媚びないゲームメディアがあることを確認できたのは救いです。

 

 

IGN Japanの「馴れ合い雑談」

 

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IGNというメディアがなんとかして、「アサクリ シャドウズ」をヨイショしたいことは以下を観るとよくわかります。

 

 

「ながら」で全部聞きましたが、今現在の議論を深化させるような内容ではありませんでした。「激論」ではなく、「馴れ合い雑談」です。彼らにとって、メーカー擁護はデフォルトであることを確信しました。意識していなくても、そのバイアスがかかっているとしか思えない内容です。

現在の議論については、「『将軍』にウィリアム・アダムスを登場させてもポリコレだと言われないのに、『アサクリ』に黒人を出すと叩かれるのは差別」と言ってます。へえ、「将軍」は、ウィリアム・アダムスが日本刀の名手として大活躍し、日本人をぶっ殺す話でしたっけ? すでに説明したように、黒人を登場させたことへの批判は、史実であるかのように見せつつ、ほぼあり得ないことを創作したことと密接に関わってますから、「黒人」「白人」だけを切り取るのは粗雑すぎです。

 

 

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