松沢呉一のビバノン・ライフ

差別国家の超えられない格差—なぜ中国は「男より女の方が自殺者が多い国」なのか[中編]-(松沢呉一)

数字が公表されない中国の自殺—なぜ中国はほとんど唯一「男より女の方が自殺者が多い国」なのか[前編]」の続きです。

 

 

狙われる幼稚園、病院、外国人

 

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そういえば、昨年、中国では幼稚園での刺殺事件もありました。

 

 

 

犯人は子どもを幼稚園に通わせている親だったようなので、純然たる「無差別殺人」「通り魔事件」とは違いそうですが、2021年にも幼稚園で2名が殺される事件が起きてます。

 

 

こういう事件があると連鎖を恐れ、とくにその連鎖がラスボスである共産党に向かうことを恐れて、当局は詳細を発表しない、あるいは一切発表しないですが、弱い者を狙っていると想像するのは無理がない。病院での無差別殺人もありましたしね。

また、米人死傷事件や今回の日本人学校のスクールバス事件を見ると、国内の不満を外に向けようと躍起になっている中国政府の影響も考えないではいられません。

中国の経済状況が好転することは当面ないでしょうから、このような事件も自殺も増えていきそうです。

 

 

農村戸籍と都市戸籍の絶望的な格差

 

vivanon_sentence前回見たように、中国は1990年代から2000年代にかけて、10万人当たりの自殺率は世界3位くらいの高い数値を出していたと思われます。そのため、中国政府は公式の数値をWHOに報告するのをやめてしまってますが、その後は自殺率が落ちていたようです。これはもともと数字を高めていた農村部の女の自殺が減ってきたためです。

2002年の中国の研究では、「農村部の若い女性の自殺率が若い男性の自殺率よりも66%高い」という他の国では考えられない数字が出ています。農村部の若い女性を除くと「男性と女性の自殺率はほぼ同じ」。男女が同程度というだけでも世界的には異例ですが、農村部は一層異常。

確かに中国では農村戸籍と都市戸籍は日本では考えられない格差があります。ちょうど先ほど公開された「中国まる見え情報局」がそのテーマを取り上げていました。

 

 

「中国まる見え情報局」は街歩きや食い物の回もありますが、この二人が出る時は、突っ込んだ内容が多いです。

 

 

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