戒厳令の夜、なぜ日本のテレビは役に立たなかったのか—たった一人のYouTuberに負けたオールドメディア-(松沢呉一)
「6時間で終わった韓国の戒厳令はなんだったのか—「メンヘラ大統領の発作」説が有力」の続きです。
日本の全テレビよりきばるんの方が役に立った夜
韓国の戒厳令ですが、各国の政府や在韓公館が自国民に注意を促し、在韓の国民に外出を避けて、自宅待機するように勧めたり、これから渡韓予定のある国民に渡韓を控えるように呼びかけています。戒厳令が解除されて以降も、これらの警報は解かれていません。
確かになお騒動は収まってはおらず、野党「共に民主党」は尹錫悦大統領弾劾デモを継続しています。確認はしてないですが、「共に民主党」の支持者の中から、「戒厳令を仕掛けたのは尹の背後にいる日本の極右勢力だ。日本製品を買うな」と言い出しているのがいるでしょう。この人たちは日本人にとっては危険極まりないので、難癖をつけられて「賠償しろ」と言われないように、デモには近づかないのが賢明です。
頭が痛いですが、そこまで日本政府も国民も韓国には興味がないのが現実。K-POPアイドルに興味のある国民が一定数いるだけ。
日本の外務省も今回のことに反応しておらず、在韓国大使館は、デモや集会に近づかないように呼びかけていますが、これは戒厳令を受けたものではなく、それ以前から出ていたものだと思われます。
そのことは日本のメディアがこの件に冷淡であることにもよく出てます。日本のメディアが興味があるのは韓国の食い物とK-POPだけ。国民の興味を反映してます。
韓国のテレビは生中継していましたし、生中継まではしていなかったと思いますが、欧米メディアも、台湾やシンガポールなどアジア各国のメディアも速報を出してました。
私は韓国のテレビをチラチラ眺めながら、YouTuberのきばるんの生配信を観ていたのはお伝えした通りです。きばるんのように、町の様子を伝え、テレビの中継を観ながら生配信をするYouTuberがいて、韓国に来ている日本人に注意を呼びかけ、韓国に来ることを控えるように呼びかけているYouTuberたちも多数いたのに、日本のテレビはリアリタイムには反応せず、戒厳令が解かれて、しばらくしてから通常の朝のニュースで取り上げていたと思います(ここは改めて検証する必要がありますが)。
きばるんは家に帰って生中継を始め、議員が集結し、国民も国会を取り囲み、軍が国会に突入しようとする様子が気になって、国会前に行こうとしたのですが、視聴者に止められていました。止めるのは当然ではありながら、細心の注意を払いながら現場からの中継をして欲しくもあって、私は観てないですが、国会前から中継していたYouTuberも多数いたと思います。
それに引き換え、「日本のメディアは何をしているんだ」ってことですが、その時の私は、日本のメディアはほとんど頭になく、「そんなもんだべ、日本のメディアは」と思っていただけです。
✴︎米国の在韓大使館・領事館も警報を出しています。
日本のテレビにも役割はちょっとはある
「そんなもん」と思っていた立場から、日本のテレビを擁護しておきます。
韓国メディアが迅速な対応をしたのは当然として、欧米メディアは時差があるので、テレビ局がフル稼働している時間帯であり、素早い対応が可能だったのに対して、日本では局員の多くは酒を飲んでへべれけになっているか、セックスしているか、寝ているかの時間帯です。
台湾メディアや韓国のYouTuberたちも条件は同じですが、彼らは戒厳令の重さを理解しているのに対して、ソウルにいる日本の特派員たちはK-POPアイドルの動向と韓国の料理屋やスイーツの流行を日本に伝えることが主な仕事ですから、国会で何が起きていようと興味はなく、あの夜はマッコリを飲んでとっとと寝ていたか、セックスしていたと思います。
テレビ局では地震などの緊急事態に備えて、すぐさま放送できるように深夜でも交代で人員を確保していますが、そいつらも戒厳令なんて言葉を知りませんから、「韓国で戒厳令? ナニそれ。美味いの?」「誰の新曲?」って会話をして、チャミスルを飲んで仮眠したと思います(当直時は飲酒は禁止か)。
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