『醒めながら見る夢』 先生、これおかしいですよ!辻仁成ワールドの底知れない謎とキモさ(柳下毅一郎) -3,655文字-
『醒めながら見る夢』
監督・脚本・編集 辻仁成
出演 堂珍嘉邦、高梨臨、村井良大、石橋杏奈、松岡充、高橋ひとみ
えーこれ原作小説があって、それが舞台化されて、そんでもって今度映画になったわけなんだよね? で、その過程でいろんな人がかかわって、結果としてこれが出来上がってるんだと思うとマジで頭がくらくらするっていうか、誰か途中で「辻先生、これおかしいですよ!」と忠告してあげる人はいなかったのか。わたくしのような凡人にはまったく意味がわからないのだが、これから語るのは芥川賞作家が書いたストーリーに基づく映画である。
爆音でつんざくギターの前で、ポールダンスを踊る女たち……今や飛ぶ鳥を落とす劇団“酔生夢死”の練習であった……って何よこれ?ポールダンサーじゃなくて劇団なの? しかしそれは劇団であって、人気演出家優児(Chemistryの堂珍嘉邦)は「金魚、台詞にもっと感情こめるんだ!」とものすごく抽象的なダメ出しをしている。「見てる側が度肝を抜くようなパフォーマンスをするんだ!」で、ダメ出しが終わると二人三脚で劇団をやってきた相方をつかまえて。
「ちょっと話があるんだ……いろいろ考えたんだけど、ぼくは辞めようと思う。今度の公演を最後にする。今ならぼくがいなくても大丈夫だよ」
「どういうことだよ。なんで辞めるんだなんていうんだ」
「なんとなく……自分の時間が欲しくなったんだ」
って何も考えてないじゃないか! そのまま表に出たところで陽菜(石橋杏奈)に声をかけられる。
「優児さん……お姉さんのことで話があるんやけど」
だが陽菜をふりきって帰る優児。家には陽菜の姉、亜紀(高梨臨)がいた。ちなみにこれは京都の話で、優児は広い町家に亜紀と二人で暮らしている。亜紀と結婚したので、もっと二人で過ごす時間が欲しい、と劇団を辞めることにしたのだった。どんだけいい暮らしてるんだよ!と言いたいところだが辻仁成ワールドでは金の心配など誰もしないのだ。
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