『くちづけ』 涙ソムリエ絶賛の映画を最後まで観てしまう人間の愚かしさ (柳下毅一郎) -3,515文字-
監督 堤幸彦
原作・脚本 宅間孝行
撮影 斑目重友
音楽 朝川智之
出演 貫地谷しほり、竹中直人、宅間孝行、田畑智子、橋本愛、麻生祐未、平田満
ぼくはこのコラムのための映画をもっぱら映画館で見ているわけで、となると当然ながら同じ映画の予告編にたびたび遭遇しては日本映画の未来に対する絶望を深めてゆくことになる。で、映画館で見るたびに「この映画を見たら死ぬ……!」と恐怖にかられていたのが本作である。もう竹中直人が満場の涙をそそる!という時点で許してくれ、と言わざるを得ないのだが(何を隠そうこの世で竹中直人の「泣かせる芝居」ほど憎んでいるものはない。というか別に隠してないけど!)加えてこのストーリー展開。
さて『20世紀少年』でおなじみ日本映画界最大のヒットメーカー堤幸彦が「東京セレソンデラックスの伝説の舞台を映画化」だそうである。そうかこれが伝説なのか……映画だけでなく演劇界の未来にも不安が高まるようなコピーだが、その映画がついに公開になり、“今年一番泣ける映画”と大評判で“涙活”されているらしい。もういろいろ死にたくなるような……はたして生きて帰ってこれるのか?
12月25日、クリスマスの夜。知的障害者の自立支援ホーム「ひまわり荘」ではクリスマス・パーティの準備が進められていた。だが自己中心的で遵法精神がない(というか遵法ということがわかっていない)入所者は勝手に職場のクリスマスツリーを持って来てしまったりして大騒ぎ。リーダー格のうーやん(宅間孝行)はタキシード姿。誰よりもうざく騒ぎたてるうーやんを中心に知的障害者漫才がくりひろげられているが、今日はマコちゃんの誕生日だから結婚するんだよ!と騒ぐうーやん。そこにうーやんの妹トモちゃん(田畑智子)が駆けこんでくる。
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