『47 Ronin』 -無駄な知識に混乱!結局は忠臣蔵と縁もゆかりもない疑似和風ファンタジー (柳下毅一郎) -2,966文字-
監督 カール・リンシュ
脚本 クリス・モーガン、ホセイン・アミニ
撮影 ジョン・マシソン
出演 キアヌ・リーブス、真田広之、柴咲コウ、浅野忠信、菊地凛子、赤西仁
キアヌ・リーブスが『忠臣蔵』に挑む!という時点でいろいろやばいと噂のあの作品がついに日本上陸。どれどれ……と予告を見たらいずことも知れぬ荒野でオークやドラゴンと戦っている剣士たち! こ、これは……予想をはるかに超えるヤバさで「世界最速公開」! いやアメリカで上映できるんですかこれ。
さて、ときは将軍TSUNAYOSHIの時代、浅野内匠頭(田中泯)は領民から慕われる情け深きAKOの領主であった。ある日、浅野は虐められている天狗と人間のあいだの鬼子カイを見つける。周囲は不吉だから殺せと騒ぐものの、浅野はそれをとどめて許してやれという。周囲から差別を受けながら成長したカイ(キアヌ・リーブス)はいつしか浅野の娘ミカ(柴咲コウ)と恋に落ちていたのだった。
さてそんなある日、大石内蔵助(真田広之)率いる武士団は、AKOの地をあらすモンスターと戦っていた。中つ国にでもいそうな異形の怪物、最後に見事な剣技で倒したのはカイだったが、「おまえは武士ではない」と認めてもらえない。怪物も倒したところでSHOGUNをAKOに迎え、剣術大会がおこなわれることになる。だが、隣国の領主吉良上野介(浅野忠信)はAKOの地を虎視眈々と狙っていた。愛人の妖術使いミヅキ(菊地凛子)は吉良の野望をかなえるため、内匠頭に罠をしかける……
これ、東欧ロケによる日本ならざる風景といい、日中韓をてきとうにまぜこぜにした「なんちゃって東洋テイスト」な建物や衣装といい、怪物や妖怪が跋扈するファンタジー世界といい、どこを切っても『忠臣蔵』とは縁もゆかりもない疑似和風ファンタジーにしか見えない(なんせ兜はモンゴル兵みたいだし、着物は花魁道中である)。そっちをあげつらおうと思えばネタはいくらでもある、といいうか正しいところを探すほうが難しいレベルである。じゃあ製作者たちは日本を馬鹿にしきっているのかというと、これがまったくそんなことはない。むしろ武士道とか大好きで、日本文化にも異常なまでに詳しくて、だがそれがことごとくまちがった方向への努力となってしまっているという希有な例なのであった。
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