『灰色のカラス』 女の業「男性恐怖症、同性愛、母親、自殺、トラウマ、コンプレックス、孤独」・・・が、何一つ納得できない (柳下毅一郎) -2,616文字-
『灰色の烏』
監督 清水艶
脚本 清水艶、木村優希
撮影 加藤哲宏
出演 西田エリ、小林歌穂、仁科貴、内田春菊
ポスターには太字で「男性恐怖症、同性愛、母親、自殺、トラウマ、コンプレックス、孤独、」って書いてある。で、「シンガーソングライターで女優の西田エリが、自身の絵本を原案に主演」である。もうこれ読んでるだけで鬱になってきそうなんだが、映画はもちろんその期待にたがわず女の業をこれでもかと……
映画がはじまるとランドセルの少女が走っている。何かに追われているかのように。イチゴを落としながら。そのイチゴを踏みつぶすのは顔を真っ黒に塗った天狗(すごくこわい)。逃げて逃げて……少女はいつの間にかランドセルを背負った成人女性になっていた。別の意味ですごくこわい。逃げた先に扉があって、ランドセル女は扉を叩いて
「いれて。たまえも入れてよ! 入れてよ!」
だがその声は届かず……
翌朝、その夢を見ていたランドセル女望月珠恵(西田エリ)は会社に行く。化粧もなくひっつめ髪に無地のTシャツという女っ気のない恰好。だが社長(仁科貴)につかまって延々セクハラを受ける。どうやら見合いを勧められているらしく、ずっと無言のタマエに対して
「何が嫌なの? あんただって人のこと言えないでしょ。うちもそんなに余裕ないのよ。いつまでもお茶汲みとコピー取りしかしないような人間雇ってるような余裕はないから。だいたいさ、きみ、28にもなってまさか男を知らないとかないでしょ」
男の話をされるとトイレに駆け込んでゲロ! セックスを全身で拒絶しているタマエである。帰宅後、キャンプに出かけようとすると髪を振り乱した母(内田春菊)が迫ってくる。
「どこに行くの。わたしを捨てようっていうんでしょ! 捨てるんだったら殺して!」
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