『夏美のホタル』 配給:イオンエンターテイメントだから地方と中央の逆情報格差上映。原作は安倍首相推薦のスピ系作家!(柳下毅一郎)
→公式サイトより
『夏美のホタル』
監督 廣木隆一
原作 森沢明夫
脚本 片岡翔、港岳彦
撮影 花村也寸志
音楽 石橋英子
出演 有村架純、工藤阿須加、光石研、吉行和子、小林薫、中村優子
配給:イオンエンターテイメント。つまり日本中のイオンシネマで盛大に上映される作品である。当初からそういう予定で作られたかどうかはわからないのだが、都内ではわずかにシネマカリテとイオンシネマ板橋の二館のみでひっそりと上映であるにもかかわらず、全国的にはそれなりの盛り上がりを見せてかなりの興行収入さえ稼いでしまうかもしれない。地方と中央の情報格差はよく言われることだが、こと映画においてはあるいは今後は逆格差もありうるのかもしれない。そんな時代の象徴的作品となった本作、監督廣木隆一と主演有村架純はともかくとして(というかこの映画、有村架純のスケジュールを押さえるところからはじまったのではないかという疑いがひしひしと……)、原作が森沢明夫! あの『ふしぎな岬の物語』では小百合様をメイド喫茶のヒロインにし、『ライアの祈り』では子供を産めない女性に真っ向から喧嘩を売った安倍首相推薦のスピリチュアル系作家である。いったいどんなもんが……と思ったが、今回にかぎってはスピよりも話の薄さがきわだった(その薄い話でも喧嘩だけは存分に売ってくるところがアレなんですが……)。どんな話かというと
(チラシ裏の「STORY」より)
写真家になる将来の夢と、恋人の慎吾との関係に悩んでいた夏美は父の形見のバイクで思い出の森へ向かう。そこで小さな商店を営んでいる、通称地蔵さんとヤスばあさん親子に出会い、居候することに。地蔵さんの友人、雲月の不遜な態度を腹立たしく重いながらも、あとを追ってやってきた慎吾も加わり、“たけ屋”での穏やかな生活を楽しんでいた。しかし、ある日、地蔵さんが別れた家族との間に埋められない溝を抱え、長い間苦しんでいることを知る。
というわけでこれでほぼ全部! ポイントは「“たけ屋”での穏やかな生活」というところで、夏美(有村架純)がスナップ写真(なんといまどきニコンのフィルムカメラで撮影している)を撮りながらのまったり田舎暮らし。これが延々と続くのである。夏美は父親との思い出の地でホタルを撮ろうと思って来たのだが、川に行ってもホタルは見つからない。で、ホタルを探していつのまにか長逗留。このあたりは撮影もいいし、ミドルショットの長回しで撮られる芝居も悪くない。“たけ屋”がスロープの上にあって、そこからバス停を見下ろすロケーションもいい感じである。で、悪くはないんだけど、要するにそこって物語的にはまったく進んでない部分なんだよ。廣木隆一的にはしてやったりなんだろうなあ……
さて、同棲中の慎吾(工藤阿須加)から「カメラやめて実家の酒蔵を継ごうかなあ」と言われた夏美、何も言わずにぷいと飛び出してバイクで千葉の田舎(このあたりらしい )へやってきた。で、そこでいつも店の前で座っている「地蔵さん」(光石研)と知り合いになる。「地蔵さん」足が悪いのでいつも杖をついているのである。ホタルを撮りにきたと聞いた地蔵さん、雛にはまれな可愛い娘ちゃんが来たので舞い上がって(しかもバイク女子にカメラ女子といろいろ属性ついてるし!)、足が悪いにもかかわらず川の上流へとあちこち案内してホタルを探す。有村架純、ほぼずっとホットパンツ姿で美脚をアピール、見てる最中「蚊に食われそうだな……」とそればっかり気になって……
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