柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『HiGH & LOW the Movie 3 The Final Mission』 EXILE TRIBEの権力と金力を見せつけ、世にもくだらないかたちで浪費!これがヤンキーの美学という奴だね!(柳下毅一郎)

公式サイトより

 

『HiGH & LOW the Movie 3 The Final Mission』

 

監督 久保茂昭、中茎強
脚本 平沼紀久、渡辺啓、上條大輔、Team HI-AX
撮影 長野泰隆、安田光
音楽 中野雄太
主題歌 EXILE TRIBE
出演 岩田剛典、鈴木伸之、町田啓太、山下健二郎、黒木啓司、遠藤雄弥、稲葉友、山田裕貴、窪田正孝、林遣都、中村蒼、NAOTO、TAKAHIRO、登坂広臣、斎藤工、AKIRA、青柳翔、高谷裕之、岡見勇、井浦新、津川雅彦、岩城滉一、岸谷五朗、加藤雅也、笹野高史、高嶋政宏、木下ほうか、中村達也、早乙女太一、長谷川初範、豊原功補、斉藤洋介、飯島直子、小泉今日子、YOU、渡辺裕之、堀部圭壱、矢島健一、鈴木梨央

 

face SWORDの祭りはポトラッチ! EXILE TRIBEの権力と金力を見せつけ、それを世にもくだらないかたちで浪費しつづけることである種のリスペクトを獲得したEXILE TRIBE総出演のハイ&ローシリーズ、映画第四弾にしてシーズン2完結編(だったことををこれ見てはじめて知った)である。過去のレビューはこちら(第一作)さて、第二作End of Skyで壮絶な「USB」の奪い合いの結果、雨宮兄弟の手によってカジノ建設にまつわる政界と九龍会の癒着にまつわる資料が暴露され、九龍会は終わった……はずだったのだが本作冒頭で九龍会会長九世龍心(津川雅彦)は証拠不十分で釈放されてしまい、つながりは闇に葬られ、雨宮長兄の命と前作まるまる一本分を費やした騒動はなんの意味もなかったということになった。さて、じゃあどうしよう……というところに情報がもたらされる。琥珀(AKIRA)とはかねてから入魂の刑事西郷(豊原功補)から耳寄りな情報がもたらされる。実はSWORD地区はかつてあった医薬品工場の廃棄物で汚染されていた。政府と九龍会はそのことを隠して埋めてしまうためにそこにカジノを建てる計画をたてていた。このやりとりが暴露されれば九龍会は終わる……ってそれ第二作のときとまったく同じじゃねーかよ! いや、今度は必要なものがみっつある。つまり証人と証拠と犠牲者だ! つまり争奪戦も三倍だ! って何も信用できねーよ! そもそもこれって豊洲新市場の土壌汚染問題あたりから発想したとおぼしいのだが、問題になってるのは人体への危険性なわけで、埋めて人体に影響がなく誰も気づかない程度のものならほっといてもかまわないわけだし、そうじゃなくて人体に危険がおよぶならそもそもそっちが問題なのであって、九龍会なんか二の次三の次の話である。

 

 

これ最初のうちこそ「俺たちの街を潰してカジノを作るなんて許せない……」とか言ってたんだけど、話が進むうちにカジノによる経済効果をめぐってグループが分裂(山王連合会から離脱者が出る)したり、たびかさなる抗争と爆破のせいでSWORD地区が完全な廃墟になってしまって(これは端的に描写のやり過ぎである)、ここにいたって「カジノも悪くないかな……」となってしまっている腰砕けぶり。

「カジノ建設の裏でうまい汁を吸ってる奴らが許せねえんだ!」

 ってそれ完全に利権に一枚噛めなかったからって妬んでるだけだよ! 九龍会の側も

「このままではいずれ九龍は滅びる……そのためには新しい風が必要だ」

 とかってあからさまにSWORDに秋波をおくりはじめる始末。つまりこの三部作によってイキってたチンピラたちが「汚い大人」の側に取り込まれていく過程が描かれているわけで、EXILEも大人になってバーニング様に上納金をおさめるようになってしまったことを暗示しているのかもしれない。

 

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