柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『バーチャル男』 ・・・史上初! Vtuber監督映画。これが映画の最尖端!のはずなのだが・・・

公式サイトより

バーチャル男

監督・脚本・撮影・編集・音楽 ミソシタ
出演 山田ケルベロス、ほげちゃん、蟹江トゥン角、ジェントルメン中村、河西進、仲條リチャード聖也、ミソシタ

 

 

face 昔あったよね『バーチャル・ウォーズ』。ついに登場した史上初Vtuber (Virtual YouTuber)監督映画。これが映画の最尖端!のはずなのだがいざ見てみると驚くほど古臭く新味がない。ぼくの知らないVtuberの世界なら、たとえつまらなくてもなにか新しいことがあるのかもしれない……と思っていたのだが、こんなもんなのか!? 思わず「ヴァーチャル・リアリティは悪である」とかカビの生えた批判を引っ張り出したくなるくらい。

 

 

監督・脚本・撮影・編集その他を務めるのはVtuberミソシタ。ポエムを歌に乗せる“ポエムコア”で人気なのだそうである。ご存知のように自分のかわりにCGのキャラクターに喋らせるのがVtuberだがミソシタはおっぱいのついたコーンヘッドのような不気味なキャラクターを使用する。で、このキャラクターがポエムを歌いまくるのかと思ったらそうじゃなくて、Vtuber志望の引きこもりの中年のおっさん(山田ケルベロス)がVtuber活動するのを追いかけてゆくストーリーだった。で、「金が欲しい。モテたい。家から出たくない。この三つの希望を満たせるのはVtuberだから」とか言ってるこの勘違いおっさんのYouTube動画が延々と流れることになるわけなんだが、そんなもんが面白いわけないだろ!

さて、おっさんは視聴者を集めるにはやはりおっ(ぱい)パブ要素が必要だと考え、一方でモテるためには女の子が好きなもの –つまり「武将要素」と「闇の騎士」が必要だろうという結論に達する。そこで「23区おっパブ武将」と戦う闇の騎士「山田ケルベロス」としてVtuberデビューを果たすことになるわけである。以下、山田ケルベロスが東京23区それぞれのおっパブ界に君臨する「おっパブ武将」と戦って勝利してゆくさまが描かれる……わけだが、戦うって別に何をするでもないし(画面に「戦闘中」の文字が出るだけ)そもそも「おっパブ武将」って自作自演でしょ? なんかその「武将」と世間話したり一緒にガールズバーに行ったり洗体エステでがっかりしたりするんだが、だからなんなのかともう実に……

さて、順調に人気者になった山田ケルベロス、ファンからのラブコールも引きも切らない。その中にひときわかわいいココちゃん(ほげちゃん)がおり、山田の目は釘付けだ。だが、会いに行くのはためらわれる山田、ミソシタに実際に会って本当に写真どおりの可愛さか確かめてほしいと依頼する……が、後輩に言われてミソシタのマネージャーとして同行することにする。このへんの無意味にグダグダした展開、すべてをミソシタが撮ってる体裁にするために必要だったのかとも思うのだが、ならばなぜ後輩とのシーンとか入ってるのか。そんなわけでかわいこちゃんに会いに行った山田、「山田ケルベロス」Tシャツを着ているココちゃんから好みのタイプを聞きだすが、「マッチョな人」と言われて撃沈。さらに「やっぱり無職とかは嫌ですよね。働いてる人じゃないと……」と言われて

「やっぱ就活かな~と思って。どっかコネとかないの? やっぱりクリエイティブな仕事がいいねえ」

 

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tags: Vtuber Youtube YouTuber ほげちゃん ジェントルメン中村 ミソシタ 仲條リチャード聖也 山田ケルベロス 河西進 蟹江トゥン角

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