かるたーの大阪野球マガジン

【高校野球】部内リーグ戦・電通カップ 現在と未来を原動力に大阪一へ

前回の記事で大阪電通大高が冬の対外試合禁止期間に行う部内リーグ戦・電通カップについて軽く紹介した。今回は選手、指導者の声を交えて、より深くお伝えしたい。

リーグ戦は4チームに分けて行われる。木製バットを使用することで、チームや選手にそれぞれ個性が見える

◆目的は現在と未来へのモチベーション

前記事でも触れたと思うが、もともとは冬場に行う紅白戦だった。ところが近年の躍進で部員数が大幅に増加した影響で、紅白戦でも選手の出番がなかなか均等にできない。それならばと複数のチームに分けてリーグ戦を行おうと岡野穂高部長が発案。前年度より始まった。前回は卒業を控えた引退した3年生のチームも参加していたが、今年度は現役の12年生のみの4チームで行うことにした。会場は大阪電通大の四條畷キャンパスのグラウンドを使用することもあれば、球場を借りて行うこともある。ルールも前記事で紹介しているが、試合は7回制、最大の特徴は金属バットではなく木製か竹バットのみが使用できるという点だ。この取り組みの狙い、効果はいかほどのものなのか。岡野部長に話を聞いた。

「要はモチベーションですよね。モチベーションを上げるためにどうしたらいいかというと、複数のチームに分けてやった方が効果的で意味があるのかなと。それにこの時期は他の学校さんは練習試合をしてないので、大学の(野球部の)関係者とかプロのスカウトの方とかが見に来やすい時期なのかなと。木製での試合も見れますしね。それにそろそろ、ウチは(2年生の)生徒たちも進路を決めていく時期なので、それも目的の一つですね」

実際、この日も大学野球の関係者が何人か視察に訪れていた。ただ、他の実績のある強豪私学に比べれば、その人数はまだまだ少ない。それでもこの時期の実戦の機会と木製バットへの対応が見られるのは貴重な情報源だ。さらに岡野部長が続ける。

「やはり、大学は木製になりますし、今、この時期に木製でやることによって、大学野球へのモチベーションも上がってきます。できれば、大学以降も継続してやってほしいという思いもあります。絶対やれとは思わないですけど、大学野球は大学野球で神宮大会などいい部分もありますし、そういう世界を経験してほしいと思っています」

この効果はすでに出ている。後に紹介するが、このリーグ戦で打撃面で好成績を残している小園力駆はこの先の目標の一つに「大学野球でも通用する選手」という将来像をあげた。小園は昨年もリーグ戦の最多打点の結果を残しており、次のステップで野球をするイメージが下級生の頃からできていたのかもしれない。

また、昨秋から3年ぶりに監督に復帰し、今年度が電通カップ初参加の澁田淳一監督も選手のモチベーション向上の効果が大きいという。特に大阪電通大高は平日は校内の自称・日本一小さいグラウンドでの練習環境を強いられている。もちろん、工夫しながらもその環境で取り組んでいるが、それでもやれることは限られる。特に投手の投げ込みに関してはブルペンのある大阪電通大のグラウンドでないと厳しい。澁田監督は週末に行う大学グラウンドで広々と使用できるだけでなく、こういったリーグ戦を行うことで「それを楽しみに平日の練習にも取り組んでくれてる」とこの時期に行う電通カップの意義を語ってくれた。特に地道な基礎練習が中心になりがちな冬場のシーズンならば、なおさらだろう。この電通カップは日々の練習を乗り切るモチベーションと次のステップで野球を続けるモチベーション、現在と未来の二つの原動力を生み出してくれる取り組みなのである。

金属バットとは打球の反発度合いも違うため、打球の質にも差が生じる。ゴロの処理も一工夫必要だ

◆電通カップで見つけた新バット対策へのキーとは

電通カップは第1回の昨年も観戦する機会があったが、試合を見ていると、打者の個性がそれぞれに現れて興味深い。バットの芯に当てようとミート重視の当てるだけのスイングをする選手もいれば、自らの判断で送りバントをする選手、かまわずフルスイングする選手もいる。また、基本的に木や竹なら特に規制はないため、昨年は派手なピンク色のバットを使用するなど、バットにこだわりを持った選手も見られた。このような金属バット以外での試合をすると、長打が減って、スモールベースボールになるという印象を持つ人もいることだろう。ところが昨年は従来の飛ぶ金属バットよりも木製バットの方がいい打撃をする選手も出てくるのがおもしろいところだ。バットの芯に当てる意識をより持つことで正しいフォームが身についたのではないかと当時の指導陣が語っていた。取材日に行われた試合は前記事の通り、2試合ともロースコアの接戦になった。確かに芯を外した打球はどん詰まりになったり、いい角度で上がった打球が外野手の定位置にしか飛ばないなど、木製ならではの打球も見られた。しかし、痛烈な打球もあれば、長打も何本か出るなど、しっかりしたスイングで芯で捉えれば木製になったからと言って、極端なパワー不足になったという印象はない。

特に今年度の電通カップで木製バットでも抜群の対応力を見せているのが小園力駆だろう。昨年度も下級生ながら最多打点を獲得し、この日も決勝点となる左中間越えの適時二塁打を放ち、勝負強さを見せている。今大会の目標は「チームの優勝が一番だが、今年度は(打撃のタイトルを)全部狙いたい」と意欲十分。小園はこの対応力に関しては金属バットはこする感じでも打球はそれなりに飛ぶが、木製バットは芯に当てるとよく飛ぶため、できるだけ芯に当てる意識が好結果を生みだしていると分析する。大阪電通大高も他校の例に漏れず、秋季大会敗退後の練習試合では新基準の金属バットを使用している。比較的、木製に近い反発力とのことだが、実際に木製バットと新基準の金属バットでは感触の違いはあるのだろうか。それを小園に聞くと、「たぶん、あると思います」と返ってきた。そして、小園が新基準の金属バットで打つのに今のところ、自分なりに重視するポイントを語った。

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