松沢呉一のビバノン・ライフ

渋谷区を越えて-渋谷区「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を検討する 6-(松沢呉一)-2,998文字-

 

渋谷区のパートナーシップ条例成立

 

vivanon_sentence微妙な思いがあるわけですが、ともあれ可決した以上、この条例をよき契機にするしかないでしょう。

 

渋谷区同性カップル条例が成立 全国初、4月1日施行

2015年3月31日13時52分

同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」を発行するための東京都渋谷区の条例が31日、区議会本会議で可決・成立した。全国初の条例で、性的少数者の権利を守るねらいがある。4月1日に施行される。

条例は、性的少数者への偏見や差別の解消を訴え、性的少数者が個人として尊重され、多様な生き方を選択できるように求めている。

そのうえで、区在住の20歳以上の同性カップルに夫婦と同等の関係と認める「パートナーシップ証明書」を区が発行する。法的拘束力はないが、区民と区内の事業者に「公平かつ適切な対応」を求める。条例に違反した場合、是正勧告をしたうえで事業者名などを公表する。

パートナーシップ証明書の発行は数カ月後になる見込みだ。

31日の区議会本会議では、共産、公明、民主など5会派が賛成し、過半数を占めた。反対した会派は自民だけだった。

朝日新聞

他の自治体もこれに続くところが出てきましょうが、選挙対策の即製ではなく、慎重にやって欲しい。
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そのためには区議や市議に任せるのではなく、多くの人が意思表示をし、議論に参加すべきです。私はクラブに行かないし、酒も飲まないのに風営法改正を求め、同性愛者でもないのに渋谷の条例について検討をしてきたんですから、まして当事者たちはちゃんと条文を読んで理解し、意見を言いましょう。じゃないと、渋谷区を越えられないっすよ。

 

渋谷区ではなく、淀川区を手本にする

 

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象徴としてパートナー証明書は意義があるとして、セクシュアル・マイノリティのための法整備はそれ以外の方向もあることをまずは認識した方がよいと思います。むしろ、実効性は他の方向にあるのではないか。

全国的にはそんなには知られていないのかもしれないですが、大阪市淀川区は2013年に自治体としては全国で初めて「LGBT支援宣言」を出し、昨年から支援事業をスタートさせています

 

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こういう取り組みをしてきた淀川区が、前提づくりを終えて、パートナーシップ証明書条例を作るというのならまだしも理解できますが、渋谷区は唐突すぎです。

前々回、渋谷区の条例について、こう指摘しました。

3)あの条例で効果が期待できるのは、行政や事業者が内部向けの研修をしたり、相談窓口を設置するなどの対応をする点であり、パートナー証明ではない。

渋谷区の条例は、実効性や汎用性という意味では、パートナーシップ証明より、この部分に意義がありますから、こっちに重きを置き、パートナーシップ証明がない条例を制定するのもありかと思います。

「議員の構成から、パートナーシップ証明は難しい」という自治体はその方向で検討するといいのではないでしょうか。

 

ドメスティック・バイオレンスとハラスメントを検討する

 

vivanon_sentenceこのシリーズは興味をもってくれる人が少なかったため、「ビバノン」では他の条文についての疑問点を挙げずに終わってしまってましたが、そっちはそっちでさらに検討が必要です。改めてやっておきますか。

 

 

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