ネットリンチに乗じる道徳団体—下戸による酒飲み擁護 16- (松沢呉一) -2,539文字-
「ムラ社会がネットリンチを生む—下戸による酒飲み擁護 15」の続きです。
解決すべきこと
過去にAVに出ていたことをネットでばらされ、仕事を失うなんてことが先進諸国であるんですかね。あったとしたら、解雇した側が訴えられるでしょうし、そちらが社会的に叩かれるのではなかろうか。
日本では、そういう例がいくつも起きています。これはなんとかした方がいい。
ところが、制裁を加えるネット住民に乗じて、そのような例をAV叩きに利用する団体があるわけです。人権団体というのであれば、そういった過去による不利益を与える人々に対抗すべきですが、そんな発想はまったくありそうにない。
裸の映像が晒され、それによって仕事を失うことの問題は、強要なんてものがなくても生起します。日本人がCAM4で顔を出したら、そういうことが起きかねない。むしろ、好き好んで出ていたからこそ、叩かれそうです。
その時に、CAM4を規制するのが正しいか? それによって不利益を与える行為を規制するなり、抑制するなりの対応が求められるべきことは明らかじゃないですか。
問題解決を遠ざける道徳団体
あるいはAVやライブチャットじゃなくても、映像が漏れ出て、仕事を失う人がいます。女子アナでもいますね。元日テレの夏目三久は、裸の写真ではなく、コンドームを手にしていただけですよ。あれ以来、私は夏目三久が好きです。STD対策のキャンペーンに起用するといいと思います。
あるいは映像が流れ出なくても、過去に風俗嬢をやっていたというだけでも叩かれます。著名人ではなく、そういった過去で仕事ができなくなったケースは山ほどあるはず。これは現行法でも十分闘えますから、弁護士だったら、解雇や左遷、契約解除などの不当な扱いをした側を訴えるよう勧めるのが筋だろうと思います。
しかし、道徳団体はここを改善して、よりAVに出ることのリスクを減らすわけにはいかないのでしょうね。リスクが減ると、AVに出やすくなりますから。
戦前の廃娼運動が、労働環境の向上を求めず、遊廓の全否定しかやろうとしなかったことを思い出していただきたい。そのためには、遊廓ではひどいことが起きていた方がよく、ひとたび売春をしたような女たちは悲惨に死んで欲しいと願い、そのために自らデマを流しました。
こういう団体はネットリンチをする人々の仲間でしかないし、その本質は矯風会と同類の愚劣な道徳団体であるとして間違いなさそうです。
改めて「道徳では問題の解決ができない」と強調しておきます。
「アサ芸」編集部にかかってきたチクリ電話
驚き、呆れる話を聞きました。
現「週刊プレイボーイ」編集部の赤谷まりえさんが、「アサヒ芸能」編集部に在籍していた時のことです。読者からの電話がありました。
「どこどこのヘルスには幼稚園の先生が働いている。そんなのを許しておいていいのか」
赤谷さんはムカついて電話を切ったそうです。
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